すばる望遠鏡が発見、特異なクエーサー「バーベキューソース」

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すばる望遠鏡の観測から、クエーサーの成長の途中段階にあるとみられる特異な天体が見つかった。超大質量ブラックホールの進化の理解につながる重要な手がかりになりそうだ。

【2026年6月10日 すばる望遠鏡

銀河中心に存在する超大質量ブラックホールが活発にガスを取り込んでいると、強く熱せられたガスが明るく輝き、活動銀河核として観測される。そのなかでもとくに明るいものはクエーサーと呼ばれる。

超大質量ブラックホールの誕生や成長を調べるうえで近年注目されているのが「リトル・レッド・ドット(Little Red Dot; LRD)」と呼ばれる天体だ。その名のとおり小さく赤く見えるLRDは、初期宇宙に存在する超大質量ブラックホールが活発に成長している姿だと考えられている。

リトル・レッド・ドット
ジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡が撮影したリトル・レッド・ドット(提供:NASA, ESA, CSA, STScI, D. Kocevski (Colby College)

通常のクエーサーは青白く高温の光を放つが、LRDは5000度程度と比較的低温のガスが放つ光に近い特徴を示す。その理由として、LRDを取り囲む非常に濃いガスが強い光を吸収し、別の波長の光として再放射している可能性が考えられている。このような「厚いガスに覆われた段階」は、超大質量ブラックホールが急速に成長する初期の姿を知る重要な手がかりになると期待されている。

東北大学のYuxing Zhong(仲宇星)さんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器「オーノヒウラ PFS」を用いて、もともと電波で明るいクエーサー候補として見つかっていた天体を観測し、この天体が特異な性質を持つことを明らかにした。

Zhongさんたちが「BBQSORS(バーベキューソース、Blackbody Quasar and Radio Source)」と名付けたこの天体は、うしかい座の方向約100億光年彼方にある。電波とX線で強く輝く一方、可視光線では通常のクエーサーとは異なる、約1万度のガスが放つ光に似た特徴が見られた。

BBQSORSのスペクトル
BBQSORSのスペクトル(灰)。活動銀河核に特徴的な幅の広い輝線(青)に加え、約1万度のガスが放つ光に近い成分(赤)が見られる(提供:Zhong et al./市川幸平))

紫外線から赤外線までの観測データを組み合わせた解析から、BBQSORSは、LRDに似た特徴を持つが、LRDより高温のガスに覆われている可能性が示された。このことからBBQSORSは、LRD(厚いガスに覆われた若い超大質量ブラックホール)が周囲の厚いガスを吹き払いながら、ブラックホール周辺の強い活動が見える通常のクエーサーへ変化していく途中の段階にある天体という可能性が考えられる。BBQSORSは、LRDが通常のクエーサーへ移り変わる過程をとらえた貴重な候補かもしれない。

LRD、BBQSORS、通常のクエーサーをつなぐ進化シナリオの模式図
(左)LRD、(中央)BBQSORS、(左)通常のクエーサーをつなぐ進化シナリオの模式図。LRDでは超大質量ブラックホールは厚いガスに包まれ、中心のX線放射や電波ジェットが見えにくい。BBQSORSでは周囲を覆うガスが薄くなり始め、ブラックホール周辺が部分的に見え始めていると考えられる(提供:イラスト生成:ChatGPT(OpenAI)/編集:市川幸平)

「今回の発見は、オーノヒウラ PFSのような広視野分光装置が、これまで見過ごされてきた特異なブラックホール成長段階の天体を見つけ出す力を持つことを示しています。今後、同様の天体をさらに探査することで、LRDと通常のクエーサーをつなぐ進化の姿を詳しく検証していきたいです」(東北大学 市川幸平さん)。

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