宇宙誕生12億年後、銀河は「住む場所」ですでに育ち方が違っていた
【2026年6月3日 すばる望遠鏡】
現在の宇宙では、銀河の大集団である銀河団の中に存在する銀河は孤立した銀河と比べて、重いものが多い、星形成が止まりやすい、形が丸くなる、といった様々な違いが見られる。このような、周囲に銀河が多いか少ないかで成長のしかたが変わる「環境効果」が、宇宙のごく初期から存在したのか、それとも銀河団が成熟してから現れたのかは、これまでよくわかっていなかった。
国立天文台のRonaldo Laishramさんたちの研究チームは、すばる望遠鏡の超広視野主焦点カメラ「Hyper Suprime-Cam(ハイパー・シュプリーム・カム;HSC)」による観測から、ろくぶんぎ座の方向に大規模な原始銀河団を発見した。この原始銀河団は126億光年彼方(赤方偏移z=4.9)に存在し、4つの銀河集中域が1つの大きな構造を形づくっている。その構造がインド北東部のロクタク湖に浮かぶ島々に似ていることから、「ロクタク原始銀河団」と名付けられた。

ロクタク原始銀河団。ハッブル宇宙望遠鏡(可視光線)とジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡(赤外線)の観測を合わせた擬似カラー画像。(白点)すばる望遠鏡の観測で見つかった銀河、(白い破線)ロクタク原始銀河団全体の広がり、(オレンジ色の領域)銀河が密集している場所。(等高線)銀河の数密度に対応。囲み内は密集した環境下の銀河(赤)と平均的な環境下の銀河(青)の例(提供:Laishram et al./NAOJ/NASA/ESA/CSA)
「原始銀河団は、現在の宇宙で最も巨大な構造物の建設現場です。ロクタク原始銀河団の4つの銀河集中域のそれぞれが、将来、大規模な銀河団へ成長すると考えられます。明瞭な構造を持つ原始銀河団が見つかったことで、初期宇宙において環境が銀河成長へ与える影響を調べる貴重な機会が得られました」(Laishramさん)。
Laishramさんたちはジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡の観測データを用いて、すばる望遠鏡の観測で見つかった銀河の大きさを、この原始銀河団の銀河と同時代の平均的な環境にある銀河と比較した。すると、星が生まれている領域を示す紫外線での観測サイズには大きな差はなかったが、これまでに生まれた星全体の分布を示す可視光線では、原始銀河団の銀河のほうが平均して約1.4倍大きいことが明らかになった。

銀河のサイズ分布。可視光線で観測すると、ロクタク原始銀河団中心部の銀河は同時代の平均的な環境下の銀河に比べて約1.4倍大きい(提供:Laishram et al./NAOJ)
この結果は、今まさに星が生まれている場所は同じでも、これまで積み重なってきた銀河全体の成長には差が出ていることを示している。銀河中心部で起こっている星形成が同程度でも、密集環境にある銀河では、外側の星の構造がより早く成長していたということだ。
ロクタク原始銀河団は宇宙誕生から12億年後の時代に存在しているが、そのような初期宇宙ですでに、銀河は「どこにいるか」によって成長のしかたが変わっていたことになる。銀河の進化が、銀河自身の質量や内部条件といった生まれ持った性質だけでなく、銀河団が完成するずっと前の周囲環境からも決定的な影響を受けていたことを示す成果である。
こうした環境効果が初期宇宙で一般的な現象なのか、それともロクタク原始銀河団に特有のものなのかは、すばる望遠鏡の超広視野多天体分光器「オーノヒウラ(ʻŌnohiʻula)PFS」や次世代広視野補償光学装置「ULTIMATE-Subaru」などによる今後の観測で明らかになっていくだろう。
〈参照〉
- すばる望遠鏡:宇宙誕生 12 億年後、銀河は「住む場所」ですでに育ち方が違っていた
- The Astrophysical Journal Letters:Discovery of a z ≃ 4.9 Lyα Emitter Protocluster: Wavelength-dependent Environmental Effects on Galaxy Structure 論文
〈関連リンク〉
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