秒単位で自転する微小小惑星を動画でとらえる

このエントリーをはてなブックマークに追加
地球近傍を通過する直径100m未満の小惑星を発見直後に動画観測することで、従来は検出が難しかった自転周期がとらえられた。多くは1分未満で自転している。

【2022年7月22日 東京大学

地球に接近する小惑星は、たとえ小さくても人類に被害を及ぼす可能性があるため、強い関心を持たれている。だが直径が100mにも満たないような微小小惑星ともなると、地球に十分近づかなければ発見できない。また、その微小小惑星を発見後すぐに追加観測しなければ、再び遠ざかってしまい研究機会を失ってしまう。

小惑星の研究において自転周期は重要な情報だが、微小小惑星の自転周期が求められた例は少ない。小さな天体ほど速く自転する傾向がある一方、大型望遠鏡による長時間露光撮影では明るさの変化が平坦化されるので、自転による変化が検出しにくいからだ。

地球近傍を通過する高速自転する小惑星の想像図
地球近傍を通過する高速自転する小惑星の想像図(提供:東京大学木曽観測所)

東京大学の紅山仁さんたちの研究チームは、東京大学木曽観測所の105cmシュミット望遠鏡に搭載されている、広い視野を高い時間分解能で動画撮影できるカメラ「トモエゴゼン」を用いて、発見後の数時間から数日以内の微小小惑星を観測した。2018年から2021年の間で、研究チームが自ら発見した23天体を含む計60の微小小惑星を観測したが、その多くは月までの距離の3倍以内という極めて地球に近い領域を通過していた。

紅山さんたちは1天体あたりおよそ20分間、毎秒2フレームの動画観測を行い、32天体の自転周期の推定に成功している。このうち13天体が60秒以下の周期で高速自転していることが明らかになった。最速の微小小惑星は2.99秒で1回転という結果が出たが、あまりにも速いため過小評価している可能性が示唆されている。この天体を別とすれば、10秒以下の周期で自転している微小小惑星はなかった。

小惑星2022 UQ6の明るさの時間変化と観測画像
(左)小惑星「2022 UQ6」の明るさの時間変化、(右)小惑星「2022 UQ6」の観測画像(視野は1分角×1分角)(提供:東京大学リリース、以下同)

いびつな小惑星の自転周期は、太陽光の反射と吸収した熱の再放射が異なる方向に作用する「YORP(ヨープ)効果」によって変化することが知られている。ヨープ効果で自転が加速した小惑星は遠心力で破壊される可能性があり、またヨープ効果は小さな小惑星ほど強く作用する。このことから、小惑星の直径と自転周期の下限には一定の関係があると考えられ、直径10m以下の微小小惑星は自転周期10秒以下まで加速しうるはずなのだが、今回の観測結果とは合致しない。

研究チームは観測で得た自転周期の分布を説明しうる仮説として、「接線ヨープ効果」に着目している。従来のヨープ効果では小惑星の表面に垂直な方向の熱伝導のみを計算しているが、接線ヨープ効果では表面に沿った方向の熱伝導も考慮する。紅山さんたちはこのモデルであれば、微小小惑星の自転周期に約10秒の上限が存在することを突き止めた。

小惑星のサイズと自転周期
これまでの小惑星の観測で得られたサイズと自転周期の関係。赤の〇印は本研究の観測結果、青の×印は先行研究の観測結果。破線は接線ヨープ効果を考慮した際に予測される地球接近小惑星の自転周期分布の上限。一点鎖線は従来のヨープ効果のみを考慮した際に予測される地球接近小惑星の自転周期分布の上限

今回の研究成果から、微小小惑星の自転状態を観測することにより、地球に接近する小惑星がどのような作用を受けながら地球近傍にやってくるのかという力学進化の解明が進むと期待される。

〈参照〉

〈関連リンク〉

関連記事