自己崩壊が進行中、尾を引く小惑星ゴールト

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ハッブル宇宙望遠鏡などによる観測から、小惑星ゴールトの表面の物質が宇宙空間へ放出されていて、この小惑星で自己崩壊が進んでいることが明らかになった。非常に速い自転が原因とみられている。

【2019年4月3日 HubbleSiteヨーロッパ宇宙機関

小惑星ゴールト((6478) Gault)は、太陽から約3.4億km離れたところを3.5年周期で公転している、直径4kmほどの小惑星である。火星軌道と木星軌道の間に広がる、80万個ほどの小惑星からなる小惑星帯に存在する天体の一つだ。1988年に発見されて以来、何度も観測されてきたが、とくに変わった特徴が見られるわけではなかった。

今年1月、米・ハワイの全天観測プロジェクト「ATLAS(Asteroid Terrestrial-impact Last Alert System)」によって、ゴールトから尾のようなものが伸びていることが確認された。過去の観測データを調べたところ、昨年12月の時点ですでに尾があったことが判明した。さらに、1月中旬には、ハワイに設置されているカナダ・フランス・ハワイ望遠鏡などにより2つ目の短い尾も観測された。長い方の尾は長さ80万km以上で幅は4800kmほど、短い尾の長さは約20万kmと見積もられている。

ゴールト
ハッブル宇宙望遠鏡が撮影したゴールト。彗星に見られるような尾がとらえられている。尾を構成しているのは小惑星の残骸で、ゴールトが自己崩壊中であることを示している。小惑星周囲の複数の光の筋は背景の恒星(提供:NASA, ESA, K. Meech and J. Kleyna (University of Hawaii), O. Hainaut (European Southern Observatory))

この尾の正体はゴールトから放出された物質だが、物質放出を引き起こした要因は何だろうか。たとえばゴールトに他の小惑星が衝突すればこうした放出が起こると考えられるが、ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、ゴールトの周辺に(尾のほかに)小塊が広く分布している兆候が見られないことから、このような衝突の可能性は否定された。

ゴールトの物質放出は、小天体に働く「YORP効果」によって自転が速くなり、天体が不安定になったことが原因と考えられている。小惑星のようにいびつな形状の天体は、太陽光の反射と天体表面からの熱放射が場所によって不均一であるため、自転速度が変化する。このYORP効果により、ゴールトは過去1億年の間に1万年あたり1秒の割合で自転周期が短くなってきたようだ。

ゴールトの現在の自転周期は約2時間で、これは天体が重力でまとまるのと遠心力で壊れていく境界くらいの速さである。表面は不安定になっており、小石の衝突のようなわずかな力が加わっただけでも、小惑星から物質が流れ出ていってしまう状態だ。

尾の分析から、物質の放出は昨年10月28日と12月30日に発生したことが示唆されている。それぞれの放出は数時間から数日という短期間のもので、尾は数か月のうちには消えていくとみられる。

今回の一連の観測により、ゴールトはYORP効果でによる自己崩壊が進行中であることが確認された2例目の小惑星となった。崩壊中の小惑星の観測は、天体の組成を調べる絶好の機会だ。「ゴールトまで行く必要はなく、小惑星から流れ出る物質の画像さえあれば、様々なサイズの塵を見ることができます」(ヨーロッパ南天天文台 Olivier Hainautさん)。

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