「はやぶさ2」プロジェクトチームの吉川さん、Nature誌「今年の10人」に選出

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科学誌「Nature」が選ぶ「今年の10人」の一人に、探査機「はやぶさ2」プロジェクトチーム ミッションマネージャーの吉川真さんが選出された。

【2018年12月21日 NatureJAXA宇宙科学研究所

科学誌「Nature」は12月20日号で、科学界で話題となった「今年の10人」(The 2018 Nature's 10)を発表した。そのうちの一人に、小惑星探査機「はやぶさ2」プロジェクトチーム ミッションマネージャーの吉川真さんが選ばれた。

吉川さん
吉川真さん(提供:ISAS/JAXA)

吉川さんは子供のころに童話『星の王子さま』を読み、小惑星に興味を持つようになったという。吉川さんは「小惑星は地球にとって潜在的な脅威と考えられている天体だが、同時に太陽系に関する情報を秘めており、将来の宇宙探査においては資源の供給源となる可能性もある」と説明した上で「小惑星は、この宇宙ではとても小さな存在ですが、人類の将来にとって重要な天体なのです」とコメントしている。

「はやぶさ2」は今年6月、3年以上の長旅の末に小惑星「リュウグウ」に無事到着した。これまでのところ、画像の取得や小型ローバーの分離とローバーの着陸、タッチダウンリハーサルなどをほぼ順調にこなしており、来年2019年にはいよいよ最大のミッションであるサンプル採取に挑む。サンプルは2020年に地球へと持ち帰られる予定だ。

この大きな挑戦を控えた「はやぶさ2」のミッションマネージャーである吉川さんは、過去に小惑星探査機「はやぶさ」と金星探査機「あかつき」という2つの無人探査ミッションにおいて、危機的な状況にあった探査機の運用計画の立案に貢献し、全く先の読めない状況を経験した研究者の一人である。

2005年、「はやぶさ」は小惑星「イトカワ」表面へのタッチダウンを果たしたものの、直後に探査機は制御不能に陥った。運用チームは、なんとか探査機との通信を復活させ、メインエンジンの機能が失われていた「はやぶさ」を地球に帰還させて、イトカワのサンプルが入っていたカプセルの回収に成功した

また、2010年には「あかつき」の軌道制御用エンジンに不具合が発生し、探査機の金星周回軌道への投入に失敗した。その後の計画再検討により、「あかつき」は2015年12月に周回軌道へ投入された

こうした過去を受けて吉川さんは、「日本の宇宙探査の歴史は浅く、まだまだ経験が必要で、多少の不運に見舞われることは避けられないが、これまでのところ、「はやぶさ2」がJAXA史上に残る過去の不運に対する、いわば埋め合わせをしてくれている」と話している。

「はやぶさ2」の小型着陸機の一つ「MASCOT」の開発チームを率いた、ドイツ航空宇宙センターのStephan Ulamecさんは「JAXAはリスクを恐れず失敗から学び、目標の達成を目指しています。NASAが安全策をとって避けるような危険を冒してでも、ミッションを大胆に進める気質をJAXAは持っています」と話している。

また、MASCOTの共同プロジェクトマネージャーを務めるフランス国立宇宙研究センターのAurelie Moussiさんは、吉川さんについて「決して慢心することなく、多くの異なる研究機関や研究所間の協力を牽引できる類稀な能力を持っておられ、それがミッションの成功の鍵となっています。これまで一緒に働いた科学者の中で、吉川さんは最も人を思いやる心を持っている方です」と話している。

なお、「今年の10人」には吉川さんのほか、天文分野からオランダ・ライデン大学のAnthony Brownさんが、ヨーロッパ宇宙機関の位置天文衛星「ガイア」の観測データの公開取りまとめを担った功績により選出されている。また、「2019年注目の人々」(Ones to watch in 2019)5人の中には、月の南極付近に探査車を着陸させるというインドのプロジェクト「チャンドラヤーン2号(Chandrayaan-2)」のディレクターを務めるMuthayya Vanithaさんと、重力波研究を行う北米ナノヘルツ天文台でマネージメントチームの主任を務めるMaura McLaughlinさんが、天文分野から選ばれている。

《今回の選出についての吉川さんの感想より、抜粋》

選ばれたことを聞いたときにはまさに驚きで、何かの間違いではないかとも思いました。私が選ばれたというよりは、「はやぶさ2」プロジェクトに注目してもらえたということなのだと思います。今回注目された理由の一つは、私自身がかなり力を注いできた英語での情報公開にあると思います。海外のチームメンバーとよい関係を保ってミッションを進めてきたことも評価されたことかもしれません。

さらに、修士課程のときから小惑星をテーマに選び、その後も、天体の地球衝突問題であるプラネタリーディフェンス(スペースガード)の活動をずっと行ってきたこと、「はやぶさ」「はやぶさ2」そして他のミッションにずっと携わってきたことも、評価につながったのかもしれません。

今回、“"Nature's 10”に日本から選ばれたことは非常に光栄なことであり、このことで「はやぶさ2」だけでなく日本の科学・技術のよいところを世界の人に知ってもらえるきっかけになれば、これほど嬉しいことはありません。これから山場を迎える「はやぶさ2」ミッションにとっても励みになると思います。“Nature's 10”への選考において、評価していただいた皆さまに感謝いたします。