アルマ望遠鏡で調べたエウロパの温度分布
米・カリフォルニア工科大学のSamantha Trumboさんたちの研究チームが、アルマ望遠鏡を使った観測によって、木星の衛星「エウロパ」の全表面をカバーする温度地図を初めて得ることに成功した。その解像度はエウロパ表面にある長さ約200kmの構造を見分けられるほどで、地上からの電波観測でこれほどの解像度が得られるのはアルマ望遠鏡ならではだ。
Trumboさんたちはアルマ望遠鏡でエウロパを4回観測し、1990年代にNASAの木星探査機「ガリレオ」で得られたエウロパの温度モデルと比較した。その結果、エウロパの表面は場所によって温度のむらがあり、北半球の一部には低温の領域が存在することが明らかになった。表面温度にばらつきが生じる理由は、表面にある物質の暖まりやすさが場所によって異なるためではないかと考えられているが、詳しい原因は不明だ。
エウロパの表面には割れ目や裂け目といった複雑な地形がある。これらの地形ができたのは2000万年前から1億8000万年前だと推定されており、太陽系の46億年の歴史から考えると非常に若い。また、表面の薄い氷の層の下には塩水の海が存在していて、岩石質の核と接触しているという強い証拠もある。そのため、エウロパの表面や内部ではいまだ解明されていない熱的な地質活動が起こっていることが示唆されている。
「今回エウロパ全球の熱放射マップをもたらしてくれたアルマ望遠鏡の画像データは本当に興味深いものです。エウロパは、地質学的に活動が活発で地下海を持つ天体だと考えられているので、表面の温度から地質活動の発生場所や範囲を特定できるかもしれません。その意味で表面温度のデータは大変重要です」(Trumboさん)。
エウロパの表面は、最高でも摂氏マイナス160度以上の温度になることはない。このため、エウロパからの熱放射は電波望遠鏡の観測対象になる。光学望遠鏡で惑星や衛星を観測する場合にはこれらの天体が反射した太陽光をとらえることしかできないが、アルマ望遠鏡のような電波望遠鏡やミリ波望遠鏡は、彗星や小惑星、衛星といった温度の低い太陽系天体が放射する熱放射を検出することができる。「エウロパの熱的な性質を調べることは、その表面で起こっている現象を理解するための他にない手段となります」(アメリカ国立電波天文台 Bryan Butlerさん)。
〈参照〉
- アルマ望遠鏡:アルマ望遠鏡が描く衛星エウロパの温度地図
- NRAO:Image Release: ALMA Maps Europa’s Temperature - First Spatially Resolved, Complete Thermal Data Set of Jupiter's Icy Moon
- The Astronomical Journal:ALMA Thermal Observations of Europa 論文
〈関連リンク〉
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