連星小惑星パトロクロスが示唆する惑星移動のタイミング

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トロヤ群の連星小惑星「パトロクロス」に関するシミュレーション研究から、太陽系形成の初期に起こったと考えられている惑星移動の時期を示唆する結果が得られた。

【2018年9月18日 サウスウエスト研究所

木星の軌道付近には、木星に先行するように太陽を公転する小惑星の一群と、木星を追いかけるように公転する小惑星の一群があり、合わせて「木星のトロヤ群小惑星」と呼ばれている。小惑星パトロクロス((617) Patroclus)はこのトロヤ群(木星を追いかける側)に属する天体の一つだ。パトロクロスには「メノイティオス(Menoetius)」という衛星が見つかっており、トロヤ群の中で唯一の大きな連星小惑星系をなしている。どちらも差し渡しが110kmほどあることから、パトロクロスとメノイティオスは二重小惑星と見なされることも多い。

パトロクロスとメノイティオスの想像図
パトロクロスとメノイティオスの想像図(提供:W.M. Keck Observatory/Lynette Cook)

「太陽系の歴史の中で、木星などの巨大な惑星同士が小競り合いを起こしていた力学的に不安定な時期に、トロヤ群の小惑星が現在の領域に取り込まれたと思われます。この時期には天王星と海王星が外側に追いやられ、その影響で太陽系の外縁部にあった小天体が内側にまき散らされました。そのうちのいくつかがトロヤ群となったのでしょう」(米・サウスウエスト研究所 David Nesvornýさん)。

最近の小天体形成のモデルによると、パトロクロスとメノイティオスのような連星小惑星は、太陽系形成の最も初期段階に作られて生き残った天体だと推測されている。「太陽系外縁天体の観測から、はるか昔の太陽系では連星小惑星は非常にありふれた天体だったことが示されています。一方、海王星の軌道以内に現存するのはほんの数ペアです。この生き残りをどう説明するかが問題です」(サウスウエスト研究所 William Bottkeさん)。

Nesvornýさんたちはシミュレーション研究から、巨大惑星の移動および外縁天体の太陽系内部への散乱が起こったのは、太陽系誕生から最初の1億年以内という早い段階だと結論付けた。もしもっと遅いタイミングだったとすると、パトロクロス-メノイティオスのような連星小惑星は他の小天体との衝突によって破壊されてしまい、無傷で生き残ってトロヤ群に取り込まれることは不可能だと考えられるためだ。つまり、トロヤ群に連星小惑星が残っているという観測事実から、惑星移動のタイミングに制限が付けられたわけである。

月や水星に見られる衝突クレーターを作った小天体の起源は、巨大惑星の移動により太陽系内部に散乱されたものだという説があるが、このクレーター形成はもっと後の時期に起こったと考えられている。今回の研究結果が示唆するように惑星移動がもっと早い時期だったとすれば、衝突クレーターの成因は他にあるのかもしれない。

今回の研究結果は、太陽系の歴史の研究におけるトロヤ群の重要性を示すものとなった。NASAはトロヤ群を探査する「ルーシー(Lucy)」計画の準備を進めており、2021年に探査機を打ち上げ予定だ。2033年にはパトロクロスとメノイティオスを訪れる予定で、さらに多くの情報がもたらされるだろう。