天の川銀河の中心で1000万年前に起こった大爆発

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天文衛星「すざく」などによる観測とシミュレーション研究により、天の川銀河の中心から噴出するガンマ線バブルとX線で見られる巨大ループ構造が、共に1000万年前に起こった大爆発の痕跡である証拠が突き止められた。

【2018年8月2日 早稲田大学

宇宙には多数の銀河が存在しており、その中には強い電波や激しいジェットを放射するなど活発な活動を示すものも見られる。

現在の天の川銀河は活動性を示さず、静かで大人しい状態にあるが、過去には激しく活動をしていた可能性を示す観測的な証拠が見つかりつつある。2010年には、天の川銀河の中心から銀河円盤の上下方向に差しわたし5万光年にわたって広がる、巨大なガンマ線バブル「フェルミ・バブル」が発見された。もしこのバブルが爆発的に形成されたとすれば、かつて天の川銀河の中心は今より1億倍も明るかったと推測される。

一方、1970年代から、全天にまたがる巨大ループ構造「ループ1」が電波やX線波長で観測されてきた。これまではこのループについて、太陽系から400光年の近距離にある超新星残骸だと考えられてきたが、フェルミ・バブルを形成した大爆発によって作られた、約3万光年彼方に存在する構造という可能性も考えられる。

ガンマ線全天図とガンマ線バブル、X線全天図と巨大ループ構造
(上)ガンマ線全天図とフェルミ・バブル、(下)X線全天図と巨大ループ構造(提供:早稲田大学リリースページより、以下同)

早稲田大学理工学術院の片岡淳さんたちの研究チームは、日本のX線天文衛星「すざく」やNASAの天文衛星「ニール・ゲーレルス・スウィフト」を用いて、フェルミ・バブルを包む高温ガスや巨大ループ構造を網羅的に観測し、ループ構造までの距離や生成起源を調べた。

ループ構造の外側のガスは約200万度で、これは銀河全体を包み込む高温ガス(銀河ハロー)と考えられる。これに対し、ループ構造の上ではガスの温度は約300万度とさらに高温で、かつ密度も高いことが観測から示された。また、ループ構造は天の川銀河内のかなり遠方に存在することもわかった。

ガスの密度が高いのは、何らかの膨張により圧縮されたガスがそこにたまっていることが原因と考えられる。その要因として、銀河中心の爆発で生じた衝撃波が銀河ハローを圧縮・加熱したと仮定すると、現状の大きさまでフェルミ・バブルが広がるのに約1000万年かかる。つまり、これらの仮定が正しければ、1000万年前に天の川銀河の中心で起こった爆発により、フェルミ・バブルやその外側の巨大ループ構造が一気に形成されたことになる。

シミュレーション計算でも、1000万年前の爆発によって掃き集められた銀河ガスの密度が高くなり、ループ構造を形成しながら約300万度まで加熱されることが示され、仮定の妥当性が確認された。爆発の起源としては、銀河中心付近での大量の星形成や活動銀河ジェットに類似したエネルギー注入が考えられるという。

フェルミ・バブルと巨大ループ、太陽系の位置関係
銀河中心のフェルミ・バブル、巨大ループと、太陽系の位置関係

フェルミ・バブルや巨大ループ構造は、天の川銀河が過去に膨大なエネルギーを宇宙空間に放出していた証拠である、つまりかつて天の川銀河も激しく活動していた証拠とみられることが、今回の研究で示された。数十億年~100億年ほどの長い銀河の寿命のうちのわずか1%に相当する1000万年以下の短い期間で、天の川銀河は予想外に活発な爆発を繰り返し、激しい進化を遂げていたのかもしれない。