アルマ望遠鏡が詳細に見せてくれた惑星形成現場

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中央部に驚くほど塵がない領域を持つ遷移円盤4つをアルマ望遠鏡で観測し、精密なガスと塵の分布図が描き出された。今まで検証されていなかった円盤の隙間の成因について、明確な答えが得られるかもしれない。

【2016年1月20日 アルマ望遠鏡

太陽以外の恒星の周りを回る太陽系外惑星はすでに2000個以上も見つかっている。こうした系外惑星がどのような環境下でどのように形成されるのかを調べるため、惑星の形成現場である、若い星の周りで回転しているガスと塵の円盤の観測や研究が行われている。

星を取り巻くガスと塵の円盤にはいくつか種類があるが、その中に「遷移円盤(transitional disk)」と呼ばれる特殊な円盤がある。遷移円盤では、中心星のすぐ近く、つまり円盤の中央部に驚くほど塵がない領域がある。

隙間の成因には主に2つの説が提唱されてきた。中心星からの強い恒星風や強力な放射によって星を取り巻くガスや塵が吹き飛ばされたか破壊されてしまったという説(光蒸発説)と、成長中の重い原始惑星が星の近くを公転することで軌道上の物質をきれいに払ったという説(原始惑星説)だ。

若い星の周りの遷移円盤の想像図
若い星の周りの遷移円盤の想像図。(茶色)円盤中の塵の分布、(青色)ガスの分布(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)/M. Kornmesser)

オランダ・ライデン天文台のNienke van der Marelさんたちの研究チームは、アルマ望遠鏡を使った観測で、4つの遷移円盤について今までになく精密なガスと塵の分布図を描くことに成功した。一般に円盤は小さく、遠くにあるため観測が難しいが、アルマ望遠鏡の高い性能のおかげで詳しい分布がとらえられた。

HD 135344Bの周りの遷移円盤
観測対象の一つ、おおかみ座の方向にあるHD 135344Bの周りの遷移円盤。ガス成分を青色に着色、塵成分をオレンジ色に着色。画像下のスケールは海王星の軌道直径(60天文単位)を表す(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO))

分布図からは、隙間に見えていた部分に大量のガスがあることが示された。さらに、ガスの円盤にも隙間が見つかり、研究者を驚かせた。ガスの円盤の隙間は塵の隙間と比べると3分の1の大きさだ。この分布は、円盤内でできたばかりの重い惑星が公転する中でガスを払っていき、一方で塵の粒子はその外側にとどまっていたというシナリオで隙間ができたという説を支持するものである。

「塵の隙間にあるガスの存在については、以前の観測でヒントを得ていたのですが、アルマが他の望遠鏡と比較できないほど素晴らしい詳細な円盤全体の物質の画像を見せてくれるまでは、光蒸発による説を否定することはできませんでした。はっきりした隙間は木星の数倍の重さの惑星の存在を明示しており、その惑星が円盤を払うことで空洞ができているのです」(van der Marelさん)。

今後はより多くの遷移円盤を観測し、それらが同じ原始惑星説を支持するかどうかを確かめる必要がある。「アルマによって、円盤の中のどこで、いつ巨大惑星が誕生するのかを見つけ、その結果を惑星形成モデルと比較することができます」(オランダ・ライデン大学、独・マックスプランク天体物理研究所 Ewine van Dishoeckさん)。