探査機インサイト、火星への旅を開始
【2018年5月7日 NASA】
日本時間5月5日20時5分(米国東部夏時間同7時5分)、NASAの火星探査機「インサイト(Mars Interior Exploration using Seismic Investigations, Geodesy and Heat Transport; InSight)」を搭載したアトラスVロケットが米・カリフォルニア州ヴァンデンバーグ空軍基地から打ち上げられた。
第2段セントールロケットに搭載されたインサイトは、打ち上げから13分16秒後に地球を周回する「待機軌道」に到達。ここからセントールが2度目の点火を行って火星へ向かう軌道に移り、打ち上げ93分後にインサイトがセントールから切り離された。
「火星の核や地質学的プロセスを調べるという今回のエキサイティングなミッションによって、アメリカ合衆国は今後も火星への道を拓き続けます。この偉業を可能にしたNASAの全チームと国外のパートナーの皆さんにお祝いを申し上げたい。月や火星への有人ミッションに弾みをつける上で、インサイトのようなミッションはかけがえのない機会となることでしょう」(NASA長官 Jim Bridenstineさん)。
探査機の打ち上げが成功した現在、インサイト・チームの作業の焦点は、これから6か月間で約4億8000万kmを飛行する火星への旅に移っている。この間、太陽電池パネルとアンテナの向きの確認や探査機の追跡が続けられるほか、予定軌道を飛行するためのエンジン噴射や、探査機のサブシステムと観測機器の試験が行われる。
インサイトの火星着陸は今年11月27日午前5時(日本時間)となる予定で、その後は2020年11月24日までの約2年間にわたって着陸地点で探査が行われる。
インサイトの着陸機には3つの観測機器が搭載されている。メインの測定機器である高精度の火星地震計「SEIS(Seismic Experiment for Interior Structure)」は、火星にも地震があるかどうかを調べ、地震波から地震発生のメカニズムに迫る。この装置で得られたデータからは火星内部の物質組成についても知ることができる。これにより、太陽系の岩石惑星を最初に形成した物質の正体や、地下の水の有無も明らかになるかもしれない。
「火星の地震を調べることは研究者たちの長年の夢で、私にとっては大学院生時代からの40年にわたる夢でした。その夢が雲間を越えて宇宙へと飛び立ち、現実のものとなりました」(NASAジェット推進研究所 インサイト主任研究員 Bruce Banerdtさん)。
熱流量測定装置「HP3(Heat Flow and Physical Properties Probe)」は火星の地下約5mまでプローブを差し込み、火星内部からの熱の流出量や熱源を調べる装置だ。火星が地球や月と同じ物質から形成されているかどうかを判断するのにもこのデータが役立つだろう。
火星の自転と内部構造を調べる装置「RISE(Rotation and Interior Structure Experiment)」では、火星が太陽の周りを公転する間に火星の自転軸がわずかにふらつく「極運動」を電波を使って測定し、火星内部の構造、特に火星の核の大きさや、核が液体であるかどうか、また鉄以外の元素が核に含まれているかどうかを知るための情報を得る。
これまでの火星ミッションでは、火星の谷や火山、岩石や土などを調べることで火星表面の歴史を研究してきたが、火星の地下深部を調べて火星の初期進化を研究するという試みは今回が初めてだ。「インサイトは私たちに火星について教えてくれるだけでなく、地球や月、他の恒星を巡る数千の惑星といった岩石質天体の形成についても理解を深める情報をもたらすでしょう」(NASA科学ミッション本部 副本部長 Thomas Zurbuchenさん)。
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