日仏共同の火星衛星のサンプルリターンミッション「MMX」
宇宙航空研究開発機構(JAXA)が計画を進めている火星衛星サンプルリターンミッション「MMX(Martian Moons eXploration)」について、JAXAとフランス国立宇宙研究センターとの間で計画検討に関する実施取り決めが締結された。
MMXのイメージイラスト(提供:JAXA)
火星には「フォボス」と「ダイモス」という2つの衛星がある。いずれも直径が10~20km程度の小さな天体だ。その起源については、火星の近くを通りがかった小惑星が火星の重力に捕らえられて衛星になったという説と、火星に天体が衝突して生じた破片が集まって衛星が作られたという説が考えられている。
火星の衛星「フォボス」(左)と「ダイモス」(右)(提供:NASA/JPL-Caltech/University of Arizona)
MMX計画で衛星からのサンプルを地球に持ち帰って分析すれば、どちらの説が有力か調べることができる。小惑星捕獲によるものとわかれば、水などの揮発性成分がどのように地球型惑星に運搬されてきたかの理解につながり、巨大衝突によって生じたものとわかれば、火星の起源物質や形成過程を理解できる。つまり、衛星の起源を解明するだけでなく、火星系全体や地球型惑星における水や大気など生命環境についても知ることができるはずだ。
また、MMX計画では工学面においても、火星圏への往還技術や天体表面上での高度なサンプリング技術、深宇宙探査用地上局を使った最適な通信技術といった、これからの惑星や衛星探査に必要とされる技術の向上も期待されている。
打ち上げ目標は2024年で、約1年後に火星圏に到着後、衛星の周回観測や着陸しての探査、サンプル採取を行う予定だ。3年間の探査期間の後、2029年に衛星サンプルを地球に持ち帰る。
日本は1998年に火星探査機「のぞみ」を打ち上げたが、火星周回軌道に投入できず探査を断念した過去がある。フランスとの共同で今回のミッションを成功させ、世界初となる火星衛星の本格探査とサンプルリターンを見事に成し遂げることを願いたい。
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