灼熱の海王星型惑星、「ホットネプチューン」K2-105 b

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約700光年先にある太陽に似た恒星の周りを約8.3日で公転する、表面温度が300度以上とみられる灼熱の海王星型惑星「ホットネプチューン」が発見された。

【2017年2月22日 東京大学国立天文台岡山天体物理観測所

太陽のような恒星の周りに惑星(系外惑星)が初めて発見されたのは1995年のことで、現在では3400個以上の系外惑星が発見されている。系外惑星の発見初期には、木星のような巨大惑星が主星のすぐそばを公転する灼熱の木星型惑星「ホットジュピター」が多く発見され、その質量・半径や軌道、大気などを調べる研究が進展してきた。

2009年から2013年にかけて、NASAの探査衛星「ケプラー」はトランジット(恒星の前を惑星が通過する現象)を観測することで2000個以上の系外惑星を発見した。そのなかには、主星のすぐそばを公転する地球半径の4倍程度の大きさを持つ灼熱の海王星型惑星「ホットネプチューン」や、地球半径の2〜3倍程度の大きさの「ホットスーパーアース」も見つかっている。これらのほとんどは1000光年以上彼方にあり詳細な観測が困難なため、惑星の質量や軌道、大気などの性質を調べることはできていなかった。

2014年からケプラーはK2計画(第2期トランジット惑星探索計画)を開始し、比較的太陽系に近い恒星も観測対象となった。こうした星で小型の惑星が見つかれば、詳細な性質を調べることも可能になると期待される。

東京大学の成田憲保さんたちは、K2の観測データを用いて惑星探しを行う国際研究チーム「ESPRINT」に参加し、日本の天体望遠鏡と観測装置を使った新しい惑星探しを行ってきた。そのなかで、かに座の方向の恒星に惑星候補を発見した。

米・ハワイのすばる望遠鏡と岡山天体物理観測所188cm望遠鏡を用いて確認観測を行ったところ、この恒星が約700光年彼方に位置する太陽に近い質量を持つ恒星であることや、周囲を公転しているのは恒星ではないことなどが確かめられた。つまり、この候補は間違いなく本物の惑星であるということになる。

K2-105
すばる望遠鏡の近赤外高コントラスト撮像装置「HiCIAO」と補償光学装置「AO188」を組み合わせて撮影された中心星EPIC 211525389(K2-105)。惑星は写っていない(掲載論文より引用)

この系外惑星「K2-105 b」は公転周期がおよそ8.3日で、半径が地球の3.6±0.4倍とほぼ海王星と同じサイズを持つホットネプチューンに分類される。K2-105 bは摂氏5200度ほどの主星のすぐそばを公転しているので、惑星の表面温度は摂氏300度以上の高温になっていると考えられている。

G型星の周りで発見された惑星の公転周期と惑星半径の分布
太陽に近い質量を持つ恒星(G型星)の周りで発見された惑星の公転周期と惑星半径の分布。今回発見されたK2-105 b(星印)は太陽系の海王星に近い半径を持つホットネプチューンに分類される(提供:東京大学、アストロバイオロジーセンター、国立天文台)

K2-105 bは、これまでにケプラーで発見されたホットネプチューンのなかで主星が比較的明るく、質量や軌道の傾きなど詳しい性質を調べていくことが可能だ。さらに、2018年以降に打ち上げられる予定のジェームズ・ウェッブ宇宙望遠鏡などで観測すれば、惑星の大気の情報も得られると期待される。

また、今回惑星を発見・確認した研究手法は2018年打ち上げ予定の惑星探索衛星「TESS」と地上望遠鏡との連携観測の予行演習とも言うべきものである。K2-105 bは生命が存在できる環境ではなさそうだが、今回の成果は日本の望遠鏡と観測装置によって第2の地球とも呼ぶべき生命を育めるような惑星を発見していくことが可能なことを示すものでもある。

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