重力マイクロレンズ現象の観測で見つかった、連星を公転する系外惑星

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重力マイクロレンズ現象をとらえた観測で2007年に見つかった系外惑星が、赤色矮星の連星の周りを公転していることがハッブル宇宙望遠鏡で確認された。

【2016年9月28日 HubbleSiteNASA

現在、3500個近くの太陽系外惑星が見つかっているが、そのうちで連星系の周りを公転している(中心星が2つ以上ある)「周連星惑星」はごく一部しかない。そうした周連星惑星の一つが、重力マイクロレンズ現象とハッブル宇宙望遠鏡(HST)の観測から確認された。

いて座の方向約8000光年の距離にある系外惑星「OGLE-2007-BLG-349 (AB) b」が発見されたのは2007年のことだ。この惑星は、地球から見て2つの星が一直線上に並んだときに、手前の星の重力によって背景の星の光が増幅される「重力マイクロレンズ現象」の観測から見つかったものである。手前の星が単独星であれば背景の星の増光パターンは単純なものになるが、手前の星に惑星があれば惑星による増光パターンも見られるので、それによって系外惑星の存在を検出するという手法である。

詳しいデータ解析から、この系には3つの天体があるらしいことがわかり、そのシナリオとして「土星質量の惑星が連星の周りを回っている」という説と「土星質量の惑星と地球質量の惑星が単独の恒星の周りを回っている」という説が考えられた。

NASAゴダード宇宙飛行センターのDavid Bennettさんたちの研究チームはHSTを用いて、この系を追加観測した。そして、HSTの非常に鮮明な画像のおかげで、光源となった背景の星とレンズ効果を起こした手前の星とを分離することに成功した。

観測から示された手前の星の明るさは単独の恒星のものにしては暗すぎたため、この天体は赤色矮星の連星系だろうと考えられる。計算によれば、太陽の0.3倍と0.4倍の質量を持つ赤色矮星が約1100万kmの間隔で連星となっており、その2つから4.8億km離れたところを地球の80倍ほどの質量を持つ系外惑星が7年周期で公転しているようだ(土星の質量は地球の95倍)。「つまり惑星系のモデルとして、2つの星と1つの惑星というものが唯一の可能性であることが、HSTの観測データからわかったのです」(Benettさん)。

惑星系の想像図
惑星系の想像図。手前が系外惑星、奥の2つが赤色矮星(提供:NASA, ESA, and G. Bacon (STScI))

周連星惑星が重力マイクロレンズ現象の観測から見つかったのは、これが初の例である。重力マイクロレンズ現象の観測から周連星惑星の検出も可能なこと、その確認においてHSTが決定的な役割を果たすことが示された。