X線天文画像を鮮明にする新手法

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X線望遠鏡が撮影した画像を解析し、再合成する新しい手法が開発された。この手法を天文衛星「チャンドラ」が撮影した超新星残骸カシオペヤ座Aの画像に適用し、鮮明化に成功した。

【2023年6月29日 立教大学

1970年以来、X線観測装置を搭載した天文衛星が数多く打ち上げられ、ブラックホールや超新星爆発などを対象としたX線天文学に貢献してきた。なかでも1999年に打ち上げられ現在も活躍中のNASAのX線天文衛星「チャンドラ」は、X線衛星の中で最も高い空間分解能(0.5秒角)を誇る。

しかし、X線を集めてとらえるX線望遠鏡には、光軸から離れるほど像がぼやけてしまうという弱点がある。画像の中心付近では点に写る天体も、端へ行くほど広がった姿になってしまう。理想的な点像からのずれの度合いを「点広がり関数(point-spread function; PSF)」と呼ぶが、光軸からの距離が遠いほどPSFの広がりも大きい。つまり、望遠鏡が得たX線画像は、場所ごとに集光力の異なるレンズで見たような状態なのだ。

カシオペヤ座Aのモノクロ画像とシミュレーションで得た単色エネルギーの場所毎のPSFを等間隔で表示したもの
光軸から離れるほど像がぼやける、観測画像とPSFの広がりの関係。(背景)「チャンドラ」によるカシオペヤ座A(Obs. ID=4636)のモノクロ画像。(カラー)シミュレーションで得た単色エネルギー(2.3keV)の場所毎のPSFを等間隔で表示したもの。カラーはPSFの確率分布を表す(提供:立教大学、以下同)

周辺部がぼやけてない、真の天体像を得る手法として、「画像デコンボリューション法」がよく使われている。この方法では、事前にシミュレーションなどで得たPSFと観測画像を照らし合わせて、数学的な処理によってPSFの影響を補正する。とりわけ天文学でよく使われてきたのが「Richardson-Lucy デコンボリューション法」(RL法)だが、実際に適用する際には、1つの観測画像に対してただ1つのPSFを当てはめることが多い。これでは、場所によってPSFが異なるチャンドラの画像全体はうまく補正できない。

立教大学の酒井優輔さんたちの研究チームは、RL法をベースにしつつ、複数のPSFを計算過程で取り込む新しい手法を開発した。チャンドラが撮影した超新星残骸「カシオペヤ座A」のX線画像にこの手法を適用したところ、光軸から離れた箇所も鮮明になった。残骸の外側のフィラメント構造も、よりシャープに表現されている。

カシオペヤ座Aの観測画像と本手法を適用した結果
(左)カシオペヤ座Aの観測画像(擬似カラー)。(右)本手法を左図に適用した結果。画像全体が鮮明化されている。画像クリックで拡大表示

チャンドラのこれまでの観測データに今回の手法を適用することで、未知の構造を発見したり、時間変化を高精度で計測したりできると期待される。

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