超高温・超短周期の海王星型惑星を発見
【2020年9月30日 アストロバイオロジーセンター】
太陽以外の恒星を公転する系外惑星はこれまでに4000個以上発見されており、そのなかには公転周期が1日未満という超短周期の惑星もある。超短周期の軌道を持つ惑星として地球サイズのものと木星サイズのものは発見されていたが、その中間にあたる海王星サイズの惑星は発見例がなかった。そのため、この超短周期の軌道は「海王星砂漠」と呼ばれてきた。
アストロバイオロジーセンター・東京大学の成田憲保さんたちの研究チームは、NASAの系外惑星探査衛星「TESS」の観測データから、ちょうこくしつ座の方向約260光年彼方の恒星「LTT 9779」の周りを公転する、惑星候補天体「LTT 9779 b」を発見した。追加観測により、LTT 9779 bが本物の惑星であり、半径が地球の4.7倍、質量が地球の約29倍と海王星をやや大きくしたような系外惑星であることがわかった。
LTT 9779 bは主星から約250万km(太陽~水星の約23分の1)の距離をわずか19時間ほどで公転していて、「海王星砂漠」に見つかった初めての惑星となる。表面温度は摂氏1700度以上とみられている。
これまでに超短周期の海王星型惑星が見つからなかった理由について、理論的には次のように説明されてきた。公転周期1日未満の超短周期の軌道では、水素を主成分とした惑星大気が惑星の重力を振り切って主星に流れ込んでしまったり、恒星からの強烈なX線や紫外線によって水素の大気が吹き飛ばされてしまうと予想されるため、十分に重力が強く大量の水素の大気を保持できる木星型惑星か、水素の大気を全て失ってしまった地球型惑星しか存在できないというものだ。
LTT 9779 bの発見は、この従来の理論とは矛盾している。LTT 9779 bは恒星が誕生してすぐにこの軌道にやってきたのではなく、他の惑星に弾き飛ばされるなどして比較的最近この軌道に移動してきた惑星であり、今後水素の大気を失って地球型惑星へと進化していく過程にあるのかもしれない。今後、軌道や大気を詳しく調べることにより、この仮説の妥当性が検証されるだろう。LTT 9779 bは太陽系の近くにある明るい恒星を公転しているため、さらなる追観測の研究に適した惑星であり、超高温となった海王星型惑星の大気がどのような性質を持つのかを調べるうえで絶好のターゲットにもなると期待される。
〈参照〉
- アストロバイオロジーセンター:新種の海王星型惑星を発見
- 科学技術振興機構:超高温・超短周期の海王星型惑星を発見
- University of Warwick:The first Ultra Hot Neptune LTT 9779b is one of nature's improbable planets
- Nature Astronomy:An Ultra Hot Neptune in the Neptune Desert 論文
〈関連リンク〉
関連記事
- 2023/12/05 共鳴し合う6つ子の系外惑星
- 2023/08/02 蒸発する惑星が引き起こす「しゃっくり」
- 2023/07/28 巨大惑星に収縮する前の塊、若い星の周囲で発見
- 2023/07/27 次々見つかる浮遊惑星、天の川銀河に1兆個以上存在か
- 2023/07/14 公式ブログ:ペガスス座51番星系で新星座を考える
- 2023/05/25 火山活動の可能性がある地球サイズの系外惑星
- 2023/04/21 アストロメトリと直接撮像の合わせ技で系外惑星を発見
- 2023/04/04 「ケプラー」発見の天体で最も近い地球型惑星
- 2023/01/17 光合成の蛍光から系外惑星の生命を探す
- 2022/12/22 低密度の系外惑星、「煮えたぎる海洋惑星」か
- 2022/12/20 地球型惑星の大気は強い紫外線に負けない
- 2022/09/13 低温星のハビタブルゾーンで地球型惑星を発見
- 2022/09/13 惑星系に名前をつけよう!太陽系外惑星命名キャンペーン2022
- 2022/09/08 JWSTが系外惑星を初めて直接撮影
- 2022/09/01 系外惑星の大気から二酸化炭素を検出
- 2022/08/15 形成中の惑星を取り巻く円盤からガスを初検出
- 2022/08/02 すばる望遠鏡による低温の恒星を巡る惑星探し、最初の発見
- 2022/04/27 恒星に隠された系外惑星の光から大気の特性を解明
- 2022/04/08 太陽系と異なるプロセスで形成中の惑星
- 2022/03/29 系外惑星が地球のような月を持てる条件