すばる望遠鏡、新たな太陽系外縁天体を発見

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すばる望遠鏡による観測から、太陽に最接近しても海王星より2倍以上遠いところにある新天体「2015 TG387」が発見された。コンピュータシミュレーションで天体の軌道を調べたところ、未発見の質量の大きな天体の影響を受けている可能性が示された。

【2018年10月5日 すばる望遠鏡カーネギー研究所ハワイ大学

米・カーネギー研究所のScott Sheppardさんたちの研究チームが、すばる望遠鏡による観測から、太陽系の彼方の天体「2015 TG387」を発見した。

2015 TG387の発見画像
2015 TG387の発見画像(2015年10月3日撮影)。3時間ごとに撮影された画像から動きが見てとれる。公転周期が長く、とてもゆっくりとしか移動しないため、他の望遠鏡で追観測して軌道を精度よく決めるのに数年が費やされた(提供:Scott Sheppard)

「ゴブリン」の愛称がつけられたこの天体は、直径約300kmほどの小天体とみられている。近日点(軌道上で最も太陽に近づく位置)までの距離は65au(太陽から地球までの65倍)で、海王星の2倍以上遠く、発見されている天体の中では「2012 VP113」(近日点距離約80au)と「セドナ」(同76au)に次いで3番目に太陽から遠い。また、2015 TG387の遠日点(太陽から最も離れる位置)は他の2天体よりもはるかに遠く、約2300au(3450億km)にもなる。公転周期は3万年以上と計算されている。

2015 TG387、2012 VP113、セドナの軌道
2015 TG387、2012 VP113、セドナの軌道と、太陽系内の巨大ガス惑星の軌道との比較。画像クリックで表示拡大(提供:Roberto Molar Candanosa and Scott Sheppard, courtesy of Carnegie Institution for Science)

太陽系外縁部の天体は、長年にわたる公転周期のうち太陽に近づくほんのつかの間しか地球から見ることができない。そのため、太陽系内部の巨大惑星(海王星や木星など)の重力の影響をあまり受けない2015 TG387、2012 VP113、セドナなどのいわゆる「内部オールト雲天体」は、太陽系の彼方にどんな天体がどれだけあるかを知る手がかりになる。

これらの3天体の近日点はすべて似た方向に集まっており、何か未知の惑星がこれらの天体を似た軌道に押しやったということが示唆されてきた。これを検証するため、同研究チームのChad Trujilloさん(米・北アリゾナ大学)とNathan Kaibさん(オクラホマ大学)は、仮想の未知の天体(惑星X)が2015 TG387 の軌道にどのような影響を及ぼすかをシミュレーションで調べた。

すると、惑星Xが他の太陽系外縁天体と同様に2015 TG387の軌道にも影響を及ぼすことがわかった。新惑星そのものの存在を証明するものではないが、太陽系の外縁部に何か大きな天体が存在するかもしれない、ということを示唆するものだという。

「(2015 TG387などの)太陽系外縁天体は、私たちを新惑星の発見に導く手がかりとなります。たくさんの小天体が見つかるほど、私たちは太陽系外縁部をより正しく理解することができ、まだ見ぬ惑星の姿が浮かび上がってくるのです。ひいては、太陽系の進化の歴史を捉え直すことができるようになります」(Sheppard さん)。

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