深い海に覆われた惑星にも生命誕生の可能性
【2018年9月6日 UChicago News】
天体望遠鏡の能力向上に伴い、太陽系の外にも惑星が続々と発見されている。さらに、どうやって生命が他の惑星上で生き延びられるかを探る新たな研究も始まっている。
生命の進化には長い年月が必要だが、その舞台となる惑星上の明るさや温度は主星の年齢に伴って変化する。ある惑星に生命が育まれる条件は、水の存在に加えて、ある程度の期間気候を安定させるすべがあるかどうかがポイントとなる。地球を例にとると、温室効果ガスをミネラルに還元して冷えることや、火山が熱を放出して暖かくなるといったことだ。
深い海に覆われた惑星ではこうした地球のような機構は働かないが、他に生命に適した環境が維持されるすべはないのだろうか。その答えを探るため、米・ペンシルバニア州立大学のEric Fordさんとシカゴ大学のEdwin Kiteさんは、ランダムに形成された数千個の惑星の進化シミュレーションを行い、数十億年にわたる気候の変化をたどった。すると意外なことに、多くの惑星で、10億年以上にわたって気候の安定が見られた。
それらの幸運な惑星は、主星からほどよい距離にあり、ほどよい量の炭素が存在し、地殻から大量のミネラル分や元素が海に溶け込むことがないので、大気中の炭素が吸収されずにすむ。最初から十分に水があり、炭素は大気と海の間でのみ循環している。適度な濃度なら、これで十分安定した気候を保てるのだ。
「原則として、惑星に与えられる時間は、その形成初期において二酸化炭素がどのように海洋、大気、岩石に配分されていたかに依存します。地球のような地殻を介した循環システムなしでも、生命に適した環境を維持するすべがあるようです」(Kiteさん)。
今回のシミュレーションでは、主星は太陽のような星という設定で行われたが、太陽より暗く軽い「赤色矮星」にとっても希望を持てる結果だという。赤色矮星は太陽に比べてはるかにゆっくりと明るくなっていく分、生命が芽吹くのに必要な時間がさらにあると考えられるからだ。理論的には、赤色矮星を巡る惑星に必要となるのは、安定した主星からの光だけだという。
赤色矮星とその周りを回る惑星の想像図。赤色矮星は、太陽よりも質量が小さく低温のため、太陽のように黄色い光ではなく赤っぽい色の光を放っている(提供: NASA/JPL-Caltech)
〈参照〉
- UChicago News:Water worlds could support life, study says
- The Astrophysical Journal:Habitability of exoplanet waterworlds 論文
〈関連リンク〉
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