「はやぶさ」微粒子の鉱物組成を発表

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【2011年3月3日 LPSC2011

小惑星探査機「はやぶさ」が持ち帰った小惑星イトカワの微粒子の、初期分析の結果の一部が3月7日から始まる月惑星科学会議(LPSC)で発表される。世界初の小惑星サンプルとみられる物質の鉱物組成が発表され、微粒子と普通隕石との対応を見ることができる。


(1500個の微粒子のサイズ分布のグラフ)

1500個の微粒子のサイズ分布。横軸が最長寸法、縦軸がその個数。クリックで拡大(提供:中村氏ら(LPSC2011アブストラクトのpdf)。以下同)

(複数種の鉱物が共存する微粒子の電子顕微鏡図)

複数種の鉱物が共存する微粒子の電子顕微鏡図。Olivineはかんらん石、Plagioclaseは斜長石、Troiliteはトロイリ鉱、Fine dustは微細な部分。クリックで拡大

アメリカのヒューストンで3月7日から3月11日にかけて行われる月惑星科学会議(LPSC)で、「はやぶさ」が昨年6月に地球に持ち帰った微粒子の初期分析結果の一部について報告が行われる。およそ1500個の粒子に対して、その大きさと鉱物組成の分布について発表される予定だ。

今回発表されるのは2つの収集装置の1つ、サンプルA室の表面約10%を特殊なヘラを用いて微粒子を集めることで見つかった約1500個の粒子と、底面を叩いて出てきた32個の粒子の大きさと鉱物組成である。600倍の倍率でわからないような、数μm(注1)よりも小さい粒子については分析を行っていない。

ヘラで収集された微粒子の90%以上は大きさが10μm以下のものであり、もっとも大きいもので40μmであった。見つかったのはかんらん石が580個、輝石が174個、斜長石が186個、硫化鉄が113個、クロム鉄鉱が13個、リン酸塩が10個、鉄・ニッケル合金が3個、1つの粒子の中に複数の鉱物種が見られるものが447個であった。シリカ鉱物と含カリウム岩塩も少数見つかっている。

「はやぶさ」による小惑星イトカワの表面観測により、イトカワはLLコンドライトと呼ばれる普通隕石(注2)と似ていることが既にわかっていたが、今回の初期分析によりそれがほぼ確かめられた。しかし鉄・ニッケル合金の割合が小さく、この原因はいくつか考えられるがまだはっきりしたことはわかっていない。

また、コンテナの底を叩くことで30-130μmの粒子が見つかり、そのうち32個の分析も行った。これらは単一の粒子としては見つからず、1つの粒子の中に複数の鉱物が見られた。

今後はSPring8(注3)を用いた構造解析や顕微鏡を用いた詳細な分析を行う予定で、さらに新たな成果が得られることが期待される。

注1:μm(マイクロメートル) 1μm=1000分の1mm。人間の髪の毛の太さが約80μmといわれる。

注2:「普通隕石」 隕石はその組成により炭素質隕石や普通隕石、鉄隕石と分類される。また普通隕石の中でも特に鉄が少ない隕石タイプをLLタイプとして分類している。

注3:「SPring-8」 兵庫県にある大型放射光施設。高エネルギーの光を当てることで物質の詳細な構造分析を行うことができる。

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