若い星を取り巻く、2400億kmに及ぶ広大な塵の構造

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ハッブル宇宙望遠鏡による観測で、約800万歳の若い星「HR 4796A」の周囲に、差し渡し2400億kmの広大で複雑な塵の構造が発見された。

【2018年3月14日 HubbleSite

若い星を取り巻く「デブリ円盤」は、惑星が作られる際に残った塵や、岩石同士の衝突でまき散らされた塵で形成されている。その存在は長く仮説上のものだったが、1983年にNASAの赤外線天文衛星「IRAS」によって初めて、実在する証拠が発見された。

その後、地球から63光年の距離にある「がか座β星」の観測画像から、星の周りに存在するデブリ円盤を真横から見た姿が明らかにされた。1990年代後半以降は、星の光を隠して観測する装置を備えたハッブル宇宙望遠鏡(HST)によって多くの円盤がとらえられるようになり、デブリ円盤の存在はありふれたものと考えられるようになった。

ケンタウルス座の方向約240光年の距離に位置する800万歳の若い6等星「HR 4796A」の周囲にも、明るく幅の狭い塵の環が存在することが知られている。中心星から約110億km離れたところにあるこの環の成因としては、星の周りに未発見の巨大な惑星が存在しており、惑星の重力の影響で塵が掃き集められたという可能性が考えられている。

米・アリゾナ大学のGlenn Schneiderさんたちの研究チームがこの若い星をHSTで観測したところ、非常に細かい塵でできた、差し渡し約2400億km(海王星の軌道直径の約27倍)にも及ぶ広大な構造が星の周囲に新たに発見された。

HR 4796Aを取り巻く広大な塵の構造
若い星「HR 4796A」を取り巻く広大な塵の構造(提供:NASA, ESA, and G. Schneider (University of Arizona))

内側の明るい環と同様に、大きく広がる構造に含まれる塵も、中心星の近くで作られる幼い惑星同士が衝突した残骸から形成された可能性が高い。この塵が、太陽の23倍以上も明るい中心星の強い光圧によって遠くまで運ばれたとみられている。「塵の分布は、HR 4796Aを中心とした環を含む内側の領域が、どのくらい活発に相互作用を起こしているのかを示す証拠です」(Schneiderさん)。

大きく広がった構造は一方向に非常に長く伸び、反対側は切れたように短くなっていて、つぶれたドーナツ状のチューブのような形をしている。これは、水上を船が進む際に船首の両側へ広がる波ができるのと同じように、星間物質をかき分けて進む中心星の動きによるものかもしれない。または、中心星から約870億km離れた伴星である赤色矮星「HR 4796B」の影響という可能性もある。

「こうしたデブリ円盤が存在する天体系を、独立したものとして扱うことはできません。星間物質との相互作用や伴星が及ぼす力といった周辺環境の効果が、長期にわたって系の進化に影響を及ぼす可能性があるからです。全体的に非対称な形をした外側の構造は、中心星の光圧以外に周囲の物質を動かす多くの力が働いていることを示しています。こうした効果は他の系で数例見たことはありますが、HR 4796Aでは、たくさんのことが一気に起こっているようです」(Schneiderさん)。