水星の動きから太陽を調べる

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太陽は年を取る毎に質量が減り、徐々に重力が弱くなっていくため、太陽系の惑星の軌道は拡がりつつある。その関係を利用して、水星の軌道の変化から、太陽の質量の減少やその他のパラメーターが直接計測された。

【2018年1月26日 NASA

水星の近日点(軌道上で最も太陽に近づく位置)は時間の経過とともに移動することがわかっているが、その要因の大部分は他の惑星による重力で、2番目に大きな影響は太陽の重力による時空の歪みだ。アインシュタインが発表した一般相対性理論は、この水星の動きをうまく説明できたことで説得力を増したという経緯もある。

さらに、これら2つよりは影響が小さいが、太陽の内部構造やダイナミクスも水星の近日点移動に寄与する。つまり水星の動きを詳しく調べて他の影響の分を差し引けば、太陽の内部構造などを知ることができる。

太陽と水星
太陽と水星。水星は太陽に近いため、太陽の重力などの影響を非常に受けやすい(提供:NASA/SDO)

NASAゴダード宇宙センターのAntonio Genovaさんたちは水星の動きの観測をもとに、太陽質量の減少を直接計測する研究を行った。

Genovaさんたちはまず、NASAの水星探査機「メッセンジャー」の電波追跡データを利用し、水星の位置推算の精度を向上させた。メッセンジャーは2008年と2009年に計3回の水星フライバイ(接近通過)を行い、2011年3月から2015年4月まで水星の周回探査を行っている。その際のデータにとらえられた水星の動きの微妙な変化から逆算すると、太陽の物理パラメーターが水星の軌道に与える影響を調べることができる。

研究の概念図
水星の動きのわずかな変化を分析して、太陽そのものや、そのダイナミクスが惑星の軌道に及ぼす影響を調べた(提供:NASA's Goddard Space Flight Center)

この研究により、いくつかの太陽パラメーターを相対論的な効果から分離するという、位置推算データに基づいたこれまでの研究では達成できなかったことが実現された。探査機と水星の軌道を併行して扱うことで、太陽内部の進化や相対論的効果などにまつわる不明点を一挙に解決する新しい手法を編み出したといえる。

これまでの理論研究では、100億年につき太陽質量の0.1%が失われると予測されてきた。これは惑星の軌道が1天文単位(約1.5億km)あたり年間で約1.5cm太陽から遠ざかることを意味する。一方、太陽質量が失われるスピードを理論でなく観測から見積もった今回の研究では、従来の理論よりも少し低い値が求められた。

太陽質量損失率の精度向上は重力定数の安定性の向上にも貢献している。重力定数は決まった数値であると考えられているが、本当に不変であるかどうかは物理学における根本的な問題となっている。今回の研究により安定性が月の動きの研究から得られた値と比較して10倍良くなっており、この点でも重要な成果だ

「この研究は、太陽系全体における惑星の軌道の変化を測定することによって、将来、太陽と惑星の性質、宇宙の基本的な作用に関する発見が可能になることを示しています」(マサチューセッツ工科大学 Maria Zuberさん)。

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