新開発の鉛ビームで探る「宇宙の錬金術」の舞台裏

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加速器施設での実験で、新たな放射性同位元素22種が発見された。宇宙の元素合成において長年の謎だった、レアメタルから鉛に至る合成過程に関わる放射性元素を直接調べる道筋を開く成果となる。

【2026年5月26日 理化学研究所

レアメタルやウランなどが宇宙でどのように作られたのかという元素合成過程を解明することは、物理学や天文学における大きなテーマの一つだ。この研究においては新しい同位元素(原子数が同じで中性子数が異なる元素)の発見が世界中で競われていて、その中でも、重元素合成の鍵を握るレアメタル領域の同位元素の生成が最前線となっている。

仁科加速器科学研究センター(RIビーム分離生成装置チーム)の福田直樹さんたちの研究チームは、理化学研究所(埼玉県和光市)の重イオン加速器施設「RIビームファクトリー(RIBF)」で、様々な放射性同位元素(RI)を作り出す実験を行った。RIBFは約4000種の放射性同位体を生成できる次世代加速器施設である。

RIビームファクトリーと超伝導RIビーム分離生成装置
(上)RIビームファクトリーの鳥瞰図(RIビーム発生装置と独創的な基幹実験設備群で構成される重イオン加速器施設)、(中・下)超伝導RIビーム分離生成装置「BigRIPS」(RIビームを分離する第1ステージと、粒子ごとに識別して実験設備に送り出す第2ステージで構成される)(提供:理化学研究所()、(中・下))

これまでの実験ではウランやカルシウムなどのビームが用いられてきたが、今回は事前評価で効率の良さが確認されていた鉛の原子核(208Pb、原子数82/中性子数126)ビームが用いられた。光速の70%まで加速した鉛ビームをベリリウムに衝突させ、生成された放射性同位元素を調べたところ、セリウムからレニウムにわたる新しいレアメタル同位元素が22種発見された。発見された新同位元素は、約4京回の衝突実験を行っても10~100個程度しか作られないほど珍しいものだ。

新同位元素を表した核図表
今回発見された新同位元素を表した核図表(提供:理化学研究所)

新同位元素22種は、宇宙における元素合成過程、いわば「宇宙の錬金術」の影の立役者として舞台を支えるものとなる。中性子が多い側(上図で中性子数が110付近より右)の17種は、金やウランといった重い元素が誕生する「rプロセス」の合成経路のすぐ近くに位置しており、RIとしての性質が元素合成のルートを決定づけている。一方で中性子が少ない側(中性子数が60と80付近)の種は、生成プロセスがよくわかっていない、中性子が少ない安定同位元素(p核)の起源解明の手がかりになると期待される。

今回の22種で日本が発見した新同位元素の総数は324種類となった。最近10年では174種を発見していて、ここ10年間の世界発見数の約70%を占めている。