水星探査機「ベピコロンボ」、2回目の水星フライバイを実施

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日欧共同の水星探査機「ベピコロンボ」が6月23日に2回目の水星フライバイを行い、水星の表面から200kmの距離を通過した。

【2022年6月29日 ヨーロッパ宇宙機関(1)(2)(3)

JAXAの水星磁気圏探査機「みお(MMO)」と、ヨーロッパ宇宙機関(ESA)の水星表面探査機「MPO」の2機からなる共同ミッション「ベピコロンボ」は、日本時間23日18時44分に水星へ最接近し、水星の表面から200kmの高度を通過した。同機は2025年の水星軌道投入までに6回の水星フライバイを予定しており、今回は昨年10月以来2回目となる。

フライバイの際、MMOとMPOを載せた電気推進モジュール(MTM)のモニターカメラ3台が水星を撮影した。最接近時は水星の夜側を通ったため、カメラが水星の昼の様子をとらえたのは約5分後で、表面からの距離は約800kmだった。撮影はそれから約40分間続けられた。

1枚目の画像には水星の多様な地質学的特徴がとらえられている。とくに注目されているのが、左下の方に見える「チャレンジャー断崖(Challenger Rupes)」だ。高さ約2kmで、全長200kmのうち170kmほどが画像内にとらえられている。この崖は水星が冷却して地殻が収縮した際に形成された。従来は無名だったが、今回のフライバイで見えることが期待されたため、19世紀に活躍し現代海洋科学の基礎を築いた英国の海洋観測艦「HMSチャレンジャー」にちなみ正式に命名されている。

高度約920kmで撮影された水星
日本時間23日18時49分22秒にモニターカメラ2が高度約920kmでとらえた水星(提供:JAXA/ESA、以下同)

チャレンジャー断崖の右、画像の下辺中央には直径140kmで無名のクレーターが写っていて、1時の方向にある明るい点が目を引く。これは比較的最近の天体衝突で飛び散った物質と考えられる。画像右辺の真ん中付近にある直径約23kmの若いクレーター「シャオジャオ(Xiao Zhao)」から放射状に明るい物質が飛び散っているのも衝突によるものだ。こうした光条は数億年以内に消えてしまうことを踏まえると、シャオジャオは水星の衝突クレーターでも比較的新しい部類に入ることがわかる。

また、直径130kmの「エミネスク(Eminescu)」クレーター(画像の右上寄り)も目を引く。ここには水星特有の地質学的特徴である「くぼみ(hollows)」があるため、とくに興味深い観測対象になると予想される。エミネスクの左下には、浮世絵師の歌川国貞にちなんで命名された「クニサダ」クレーターも見える。

次の2枚目の画像で、探査機のアンテナの左に写っているヒーニー(Heaney)は、なだらかな火山性平原に覆われた直径125kmのクレーターで、水星では珍しい火山の候補となっている。水星周回軌道に入ってから作動するベピコロンボの高解像度撮像装置にとって、重要な観測ターゲットだ。

高度1406kmで撮影された水星
日本時間23日18時51分07秒にモニターカメラ3が高度1406kmでとらえた水星

ベピコロンボは今回のフライバイで、差し渡し1550kmに及ぶ水星最大のクレーター「カロリス盆地(Caloris Planitia)」を初めてとらえた。カロリス盆地は39億年前に形成されたと考えられているが、その内外に見られる溶岩は盆地より1億年ほど後のものとみられている。これらの組成の違いを調べることはミッションの重要な目標の一つである。

高度2862kmで撮影された水星
日本時間23日18時55分32秒にモニターカメラ2が高度2862kmでとらえた水星

ベピコロンボは2025年12月の水星到着を目指して今後も飛行を続ける。次回の水星フライバイは2023年6月の予定だ。