2つの意味で最も近い超大質量ブラックホールのペア

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8900万光年の距離にある銀河NGC 7727の中心核に、1600光年間隔の超大質量ブラックホールペアが見つかった。超大質量ブラックホールのペアとしては観測史上最も地球に近く、互いの距離も最も近接している。

【2021年12月6日 ヨーロッパ南天天文台

大きな銀河の中心には超大質量ブラックホールが潜んでいることが多く、銀河同士が合体すると、2つのブラックホールも徐々に近づいて衝突合体することになる。こうした超大質量ブラックホールのペアはいくつか見つかっているが、仏・ストラスブール大学のKarina Voggelさんたちの研究チームが見つけたペアは2つの点で記録破りだ。

この超大質量ブラックホールペアは、みずがめ座の方向8900万光年の距離にある銀河NGC 7727の中心部に存在している。これまでに見つかっていた、地球に最も近いとされてきた超大質量ブラックホールペアは4億7000万光年彼方にあるので、近さの記録を大幅に更新した。また、ブラックホール同士の間隔はわずか1600光年しかなく、この近接具合も従来の記録の半分未満である。

NGC 7727
NGC 7727内の中心核。2つの明るい点の中に超大質量ブラックホールが潜んでいる。右は全体像(提供:ESO/Voggel et al.; ESO/VST ATLAS team. Acknowledgement: Durham University/CASU/WFAU)

NGC 7727に2つの中心核があること自体は、以前から知られている。これらは密集した恒星の輝きで、その中には超大質量ブラックホールがあると推測されていた。しかし、星が明るすぎるため、ブラックホールの証拠はほとんどかき消されてしまったのだ。

そこでVoggelさんさんたちはヨーロッパ南天天文台の超大型望遠鏡VLTに搭載されている分光器MUSEで中心核を観測し、ハッブル宇宙望遠鏡の観測データも加えて、星々がどれだけ激しく運動しているかを調べた。その運動の様子からブラックホールの質量を見積もったところ、2つの中心核には質量が太陽の1億5400万倍および630万倍の超大質量ブラックホールが潜んでいるという結論が得られた。重い方が元からNGC 7727の中心にあったブラックホールで、軽い方はかつてNGC 7727に取り込まれた銀河の中心核だったと考えられる。

「2つのブラックホールの近さと速度から、おそらく2億5000万年以内に合体して1つのモンスターブラックホールになることが示唆されます」(豪・クイーンズランド大学 Holger Baumgardtさん)。宇宙最大級のブラックホールが作られる過程を、このペアはたどっているのかもしれない。

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