中国の探査車「祝融号」火星着陸に成功
昨年7月に打ち上げられ今年2月から火星を周回している中国国家航天局(CNSA)の探査機「天問1号」が着陸機を分離させ、5月15日午前8時18分(日本時間、以下同)にユートピア平原南部へ着陸させることに成功した。中国は旧ソ連と米国に次いで、火星への軟着陸に成功した3か国目となった。
天問1号の着陸機には、着陸に先立つ4月24日に「祝融号」と命名された火星探査車が搭載されている。CNSAによれば、祝融は中国古代の伝説に登場する火の神で、文明の火を灯す象徴としてこの名が選ばれたという。同時に、人類の宇宙探査を「祝」福して平和な宇宙利用を通じた「融」和を願う意味も込めたとされる。
天問1号の周回機は15日午前2時ごろ、エンジンを噴射して待機軌道を離れ、午前5時ごろに着陸機を分離した。着陸機は約3時間後に火星の大気圏へ突入し、大気によるブレーキ、パラシュート、逆噴射ロケットによる減速を経て、最後は100m上空でホバリングしながら安全な地点を選んで軟着陸を果たした。
今後、祝融号は着陸地点周辺の撮影やセルフチェックを終えたあと、着陸地点を離れて探査を開始する。表面での探査に成功すれば、米国に次いで2か国目の快挙となる。
一方、元の軌道へ戻った天問1号の周回機は、今後は祝融号と地球との通信中継も担う。これまでに天問1号は、着陸地点の地形や天候などに関するデータの取得・分析を行って着陸の準備を進めてきたほか、火星全球のリモートセンシング観測も実施した。
火星探査には高いリスクと困難が伴い、惑星間空間環境や火星の薄い大気、表面の地形などがミッション遂行の上で大きな課題となる。また、通信にも遅れが生じるため、着陸地点周辺の環境が明確ではない中、複雑な手順で着陸が進められた。天問1号のミッションではここまで、地球の引力を振り切って惑星間空間へと到達する打ち上げに始まり、惑星間飛行や観測、火星着陸まで成功しており、中国の宇宙開発の発展における重要なマイルストーンを次々と築いている。
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