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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

天体写真でひもとく宇宙の不思議

表紙写真

  • 渡部潤一 著
  • ソフトバンククリエイティブ 刊
  • 17.6 x 11.4cm、208ページ
  • 2009年11月
  • ISBN978-4-7973-5052-4
  • 価格 1,000円

ハッブル宇宙望遠鏡が撮像した三裂星雲(いて座)のクローズアップ。通称「打上花火星雲」ことNGC6751(わし座)、同じく惑星状星雲のIC418(うさぎ座)。その繊細な画像に思わず評者は、後者2つに眼底出血瞳星雲、繭玉星雲(はくちょう座のIC5146に繭星雲の名がある)と命名してしまった。

強力電波源ペルセウス座Aの”宇宙クラゲ”もいい。どれも渡部先生の表現にしたがったものだ。いずれもその解像度と優美度は素晴らしい。写真に負けず、解説文もまたまた素晴らしい。五つ星を差し上げたい。惑星状星雲のでき方と形状の説明などは、評者が行っている各種講座での解説で、先生に無断でいただいてしまおうと思っている。

中でも出色は、系外惑星系の主星と惑星の明るさの比較は、東京から見た富士山頂に灯された電球と周囲に群がる蚊に例える説明だ。そんなもの見える蚊?ウルトラマンの生まれ故郷は本当は強力な電波源のM○△だったのが、印刷ミスで散光星雲のM△○(本書を参考にして〇△に入力してください)になったというお話。こと座のリング星雲もケンタウルス座のポーラーリング銀河も、宇宙を立体的に見ないと正しくは理解できないこと。

宮沢賢治の「銀河鉄道の夜」のケンタウル祭りに出てくるような、トップ・スターが樹上に輝く「クリスマス・ツリー」を上や横から見たり、などの説明にさいしては、思わず渡部先生のご尊顔を思い浮かべてしまったほどだ。

さらにまた、本書の特徴を一つ、それは各画像にアクセスするアドレスが全て添付されていること。鮮明・詳細な画像を見ながら、本書を読むことができる。おそらく渡部先生のアイディアだろう。

本書は、種々な角度から楽しみながら最新天文学を学ぶことができる、素晴らしい本である。先生は太陽系天文学がご専門だと固く信じていたら、大間違いだった。さすが、天文情報センター長、アーカイブ室長!その深く広い天文学に、評者は脱帽!

どうです、本書を片手にあなたも数百万年なんとか長生きして、りゅうこつ座η(エータカリーナ)やピストル星の華々しい最後を眺めてみませんか?それがちょっと無理なら、もう少し前になるはずのベテルギウスの超新星爆発を鑑賞しよう!

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