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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

反射望遠鏡の作り方 −設計・鏡面研磨・マウンチング−

表紙写真

  • 星野次郎 著
  • 恒星社厚生閣
  • A5判、372ページ
  • ISBN 978-4-7699-1200-2
  • 価格 6,300円

恒星社厚生閣のご担当者から「世界天文年2009にあたり、星野次郎先生の本を復刻し出版したので意見を」というご依頼を受け、わざわざコピーを送っていただいた。評者は一も二もなく「ぜひお出しになるべきです」と手紙をしたためた。なぜなら、評者にとって思い出深い本だったからである。本書の初版が出版された昭和49年は、評者が前職の教師を辞めて五島プラネタリウムに入った年。新米解説員にあるまじき行為だが、責任者の事務長さんに本書を購入するようおねだりしたのである。この本はとても良い本で、解説の仕事にも必要ですという理由をつけた。ただ本当のことを言うと、新米解説員の薄給では手が出なかった(後年、古書店でめでたく購入できた)。

反射望遠鏡の製作に特化した本というのは、天体観測者を志す者なら、読みこなさなければならないものである。その上、みなさんから望遠鏡について尋ねられ続ける解説員でもあった。そんなことから、評者は本書にずいぶんとお世話になったのである。

今や、鏡面銀メッキは死語となり、本書に記述される様々な品々は一体どこで手に入るのか知らんという時代。だからこそ、基本のキや、光学技術者の魂を知るべき現代のみなさんのためにも、恒星社さん、ぜひ頑張って下さいと、逆にお願いしたほどだ。

今や、ちまたでは高性能な望遠鏡がポンポンと売り買いされている。だが、その背後にこんな素晴らしい技術の恩恵があるのですよ!と、評者は声を大にして申し上げたい。つまり、本書は歴史的名著なのである。日本的に言えば、神棚に上げてもよいほどの本なのである。もちろんそれでは星野先生はお喜びにならないだろうし、みなさんにはぜひ実戦で使用していただくべきだろう。だが、評者にとっては、解説員としての駆け出しに際し、一番役だった本であることに変わりはない。

中野 繁先生が寄せられた文章も、大変に感動的である。ぜひともご熟読いただきたい。

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