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金井三男金井三男さんによる書評

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編集部オンラインニュース編集部による書評

星に惹かれた男たち
江戸の天文学者 間重富と伊能忠敬

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星に惹かれた男たち 江戸の天文学者 間重富と伊能忠敬
 

  • 鳴海風 著
  • 日本評論社 刊
  • 13.6 x 19.6cm、239ページ
  • 2014年12月
  • ISBN 978-4-535-78758-2

2015年は渋川春海没後300周年。冲方丁著「天地明察」で一躍有名になった江戸の初代天文方だ。筆者は、東京浅草の天文台跡ばかりでなく、本所・駿河台・築地・神田・牛込・深川・九段など天文方所縁の地のほぼ全て、渋谷の金王神社や果ては春海が眠る品川東海寺まで訪ね歩いた。だが本書の主人公は春海ではなく、副題にあるとおり、後に続いた2人の優秀な民間出身天文学者、間重富と伊能忠敬である。

著者の鳴海氏は、ご自身は和算小説家と称しておられるが、実は某有名国立大学大学院機械工学科を卒業された元エンジニアで、科学技術の造詣は深く著述は的確である。

有名な伊能忠敬の一生を記述した本はこれまでに多数出版され、筆者も読ませてもらったが、明治維新で天文方が廃止されるまで4代続いた間家の初代で、天文方高橋至時の優秀な補佐役を務めた重富のことは、この本が最も詳しいはずで、全文中の記述の3分の1を占めている。残念ながら重富関連の場所が大阪に多いので、現在筆者は訪れることができていないが、近いうちに行ってみたいと思っている。

本邦最後の太陰太陽暦(天保暦)作成に月や惑星の精密位置観測が必要で、息子重新が日本で初めて行った白昼の水星南中(1837年2月24〜26日)観測など、とても興味深い記事ばかりだ。日本近代天文学史を学びたい方は、必読で熟読玩味の本である。