Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

天文学史 新版

表紙写真

  • 桜井 邦朋 著
  • 筑摩書房
  • A6判、462ページ
  • ISBN4-480-09069-X
  • 価格 1,470円

書評を書くのは本当に難しい。著者と評者が経験も視点も異なるからだ。本書著者は知る人ぞ知る大天文学者(太陽物理学者)。一介のプラネタリウム解説員とはわけが違う。しかし、評者も著者が参考文献の一冊に上げられたパンネクックの天文学史(欧文:今も棚の上に燦然と輝いている)を、40年も前の貧乏学生時代、古書店で3000円(当時の授業料3か月分)も出して購入(バカじゃないかと言われた)し、購入を予定していた恩師の一人、故島村福太郎先生を悔しがらせた人間だ。

文庫本化前の旧版(1990年刊)に対しある書評家が下した「もっと過去を!」という評価は分からないでもない(著者は本書あとがきで悔しそうに記されているが)。だが、天文学史を学ぶ態度は未来志向にあるという著者の主張も高く評価できる。

さて評者が書評でこだわるのは、あくまでも「プラネタリウム解説員ならこういう本を読む(べき)」という点であり、本書評でおすすめするものは、必ずしも新刊・和書・大人向きとは限らない。入手できるなら多少の古書・洋書・児童書でもご紹介したい。

本書を推薦する理由は、学者としての著者が選んだ歴史事実は確実であり資料として信頼が置ける点、著者がこだわる21世紀の天文学の指向に明るくなる点、そしてどこでもいつでも気楽に読むことができ、天文学の歴史を会話のタネにできる点にある。評者は天文学の普及を理想として抱いているが、おそらくこの本が一番貢献するはずで、広くおすすめしたい。ただし、文庫版でも460ページ有余という大部だが、できればあと100円が200円ほど安価なら普及書としてはよいのになあと思う。

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