Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

星の海を航く

  • 石橋正 著
  • 成山堂書店 刊
  • 18 x 13cm、276ページ
  • 2014年1月
  • ISBN 978-4425943852

書名からわかるように、本書は海と星との関係を主として民間に伝わる話から追求したものである。著者は1926年生まれの人生の大ベテランで、あとがき掲載の経歴によれば、水産講習所(現在の東京海洋大学)を卒業、水産研究所助手を経て、東京水産大学(同じく現在の東京海洋大学)や水産庁調査船などの船長、さらに各地の水産高校の校長などを経たすごい肩書きを持った方だ。

でも決して書き忘れてはならないのが、野尻抱影先生の愛弟子だったこと。読者のみなさんは「星の文人」とニックネームされる野尻抱影先生のことをご存じだろうか。本職は英文学者で、特にギリシャ神話を日本に広めた功労者の一人だが、戦前東京有楽町にあり、戦災で焼失した東日天象館で解説シナリオ作成や、2001年閉館の五島プラネタリウムで学芸委員を勤め上げられ、立派な天文学者(てんぶんがくしゃ)だった方である。だから、筆者も野尻先生の弟子だ。

その石橋先生は、幼少の頃から星に魅せられた方で、特に流星観測の方面ではトップランナーだった。でも、それと同じあるいはそれ以上に、航海関係でトップランナーだった。筆者も一度だけ五島(列島ではない)でお会いしたことがある。そのような経歴をお持ちの方なら当然のこと、本書は日本各地の漁業関係者に伝わる星の伝承が詳細に語られ、またポリネシアなどでの伝承やスターコンパス(方位決定法)が、類書を超えて詳細に説明されており、一読に値するものだ。