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星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

宮沢賢治の地学実習

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宮沢賢治の地学実習
 

  • 柴山元彦 著
  • 創元社
  • 14.8×21cm、160ページ
  • ISBN 978-4422440187
  • 価格 1870円

今年9月に、評者は毎月各地のカルチャーセンターで行っている講座で、銀河鉄道の夜を探るという番組をさせて貰った。毎年この時期夕方によく見える銀河の話と搦めての内容だった。賢治が、当時のレベルでいかに天文通であったかを語るものでもあった。はくちょう座(北十字)を出発駅として、銀河中心の近くにあるみなみじゅうじ座までの鉄道旅を、例のタイタニック号沈没事件に登場する犠牲者達を交えて、銀河鉄道は動いたのだった。これね、当時のアマチュア天文学がまだ未成熟だったことを知る評者にとって、変わり者として友人がいなかったといわれた宮沢賢治の知識欲に、感動ものですよ!

現在の岩手大学農学部卒業後、地学教師に就職した賢治は、幼少時石っ子賢さんと呼ばれていたが、実は星っ子賢さんでもあったことが、カルチャーセンターでは主題だったのだ。本書での天文に関する内容は多いとはいえず、どちらかというと題名通り、地質や鉱物などのいわゆる地学の記事が多いが、賢治の人となりや賢治を取り巻く環境を理解するに、本書は最高の本である。生後5日目に死者200名超を出した陸羽地震が発生し、生家で震度4を体験したという逸話は、その後の賢治の生涯を示したと言っても過言ではなく、本書で評者は初めてそれを知った。賢治が創立し、現在も保存中の羅須地人協会もいずれ訪ねたいし、イギリス海岸にも行き、銀河鉄道のモデル岩手軽便鉄道にも乗ってみたい。

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