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天文学者が解説する 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅

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天文学者が解説する 宮沢賢治『銀河鉄道の夜』と宇宙の旅
 

  • 谷口義明 著
  • 光文社
  • 344ページ
  • 978-4334044831
  • 定価 1210円

のっけから皆さんに、評者が申し上げるのもナンだが、本書はこれまで続けてきた本書評300冊余りの中で1、2を争うほどの良書である。タイトルにもあるように、天文学者が解説するところがミソなのだ。そして宮沢さん自身、天文学者・宇宙学者であることが、本書を読めばよくわかるのだ。本書中にあるように、宮沢賢治さんは東京日本橋の丸善書店の常連で、同店から洋書を取り寄せていたという。評者も同店に毎月訪れ、Sky & Telescopeを購入し、新刊天文学書(今回取り上げさせてもらった3冊全て)を入手している。…同書店のセールスマンでは決してなく、もちろん無給です。

といっても、そこは1920年代の話。2020年の天文学とはいかない。ハッブルによって決められた銀河系とM31(アンドロメダ座大銀河)の関係は、本書には述べられていない。当時はM31が銀河系内にある棒状の星雲と言われていた。遠距離にあるために恒星に分解されず、星団とも思われていなかった。

本書中にもあるように、宮沢さんは決して単なる童話作家ではなく、れっきとした地質学・鉱山学の教師だった。それだけでは終わらなかったのを本書で知り、評者には宮沢さんとこの作品の不思議な関係が氷解したのである。評者は、こと座の有名なリング星雲(M57)が天気輪(本書133ページ)の候補という説に賛成したい。その他、本書はメチャクチャ面白い。お勧めです。

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