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Book Review

金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

大望遠鏡「すばる」誕生物語 星空にかけた夢

大望遠鏡「すばる」誕生物語

  • 小平桂一 著
  • 金の星社
  • A5判、173ページ
  • 2000年1月
  • ISBN 978-4323060767
  • 価格 1,260円

オアフ島まで行っておきながら、長男の結婚式に出ただけでそのまま戻ったという情けない天文老人は、本書を語る資格に欠けるかもしれない。だが、元国立天文台長であり、構想段階から「ずばる」計画の総括責任者をお務め(努め)になられた先生の本書を語らずして、天文書評家を名乗るわけにもいかないだろう。実は密かに先生と共通していると思うことが評者にはある。先生のドイツ留学時代の恩師がA.ウンゼルト教授。評者が日本で勉強した天文学教科書の一冊の著者も同教授。ただそれだけのこと。なぁんだ。

でもだからこそ評者は、小平先生が1999年に書かれた名著「宇宙の果てまで」を読んでしまったのです。あとがきには、このような夢がある話こそ若い人にも知って欲しいという声からこの本が企画され、全く新しく書き下ろされた経緯が記されている。おかげで1999年初版刊行の本書は、10年後の2009年6月に第10刷が出版され(それだけで本書の価値がわかるというものだ)、評者はそれを購入したというわけだ。

ともかく、すばる望遠鏡建設の苦労話や経緯(政治的なものも含む)が端的に書かれ、こどもでもわかる記念碑である。評者が本書で一番感動した箇所は、先生のご幼少時代の天文道へのきっかけ、日本での家庭生活のご苦労や、ハワイでの赤外線星発見時に、天文学者達が立場を離れて協力したくだりである。もちろんそれ以外の箇所も、天文少年少女達がハワイに渡ってすばるを操ることを目指すきっかけとなるには十分だ。そんな夢が描ける好書である。

あぁ、何とかしてもう一度ハワイに行きたい!自由になる時間と旅費が欲しい!とつぶやく天文老人であった。

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