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宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか

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宇宙は「もつれ」でできている 「量子論最大の難問」はどう解き明かされたか
 

  • ルイーザ・ギルダー 著、山田克哉 監修、窪田恭子 訳
  • 講談社
  • 17.5×11.5cm、592ページ
  • ISBN 978-4062579810
  • 価格 1,620円

本書を読みながら学生時代の物理学科の研究室を思い出していた。実験道具で溢れ返っていた実験物理学の研究室と、黒板と本で埋まった理論物理学の研究室を。もちろん入り浸っていたのは前者。でも本書の著者は科学ジャーナリストとして、量子論という理論物理学の研究室にズカズカ入り込んで、研究者の深層心理まで女性らしく入り込んだのだろうなと考えながらだ。少なくとも半世紀以上前の物理学者の取材だから、おそらく著書やエピソードでの言葉を読み解く女性的能力を駆使してのことだろう。

ともかく、本書は普通の科学史家が行うような啓蒙書ではなく、ドキュメンタリー、ノンフィクション的、如何にもその場で目撃しているような手法なのだ。だから、難しい量子力学をあっさりと理解することができるという、珍しい本である。本コーナーの読者の皆さんなら、本書のタイトルから「もつれ」というと宇宙のひも理論を思い出されるだろう。確かにそれは本書の背景にはある。しかしながら、本書の表面に出ているのは物理学者同士の議論のもつれなのだ。それが科学史を読み解く場合に、実に重要であることを本書は詳細にジャーナリスト的に読み解いてくれているのだ。だから、通り一遍に本書を読むだけでは、本書の真の価値を読み取ることはできない。何度も読み返すたびごとにまた新しい理解ができることに違いない。名著として自信を思ってお勧めできる本である。

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