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金井三男金井三男さんによる書評

星ナビ星ナビ「月刊ほんナビ」に掲載の書評(原智子さん他)

編集部オンラインニュース編集部による書評

算数でわかる天文学

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算数でわかる天文学
 

  • ダニエル・フライシュ、ジュリア・クレゲナウ 著/川辺哲治 訳
  • 岩波書店 刊
  • 15×21cm、254ページ
  • 2014年9月
  • ISBN 978-4000054140

久しぶりに出版された本格的天文学教科書。もしかして、大学の教科書で採用されても十分おかしくない、懐かしい「新天文学通論」のような良質の本。あぁ、著者の教授の前で、たった一人の学生が講義をしなければならなかった50年前の悪夢が蘇る!

本書は、著者前書きの前に訳者(九州大学大学院教授)の言葉があるというひじょうに珍しい本。なぜかといえば、標題にある「算数」だ。本書中に+−×÷比例しか登場せず、指数・対数・三角関数はちょっとだけ使われ、微分・積分は出てこないということを、訳者の川辺先生が「言い訳」されているのだ。けれど例えそうであっても、筆者の率直な感想としては、算数ではなくりっぱな数学である。だからこそ、ちゃんとした力学や数理天文学ひいてはブラックホールと宇宙論まで、改めて深く理解できたのである。各章ごとにある演習問題と「理解度チェック」には丁寧な解答もいいですよ。

特筆されるべき章は1章の「単位がわかる」で、計算の基礎から表記法・電卓の操作法まで懇切丁寧である。たぶんこのあたりが日本と米国の大学での違いなのだろう。理科系大学の授業内容の違いをかいま窺い知ることが出来そうだ。我が方の大学では取り上げられず、高校ではすっ飛ばされ、結局学ぶことがないであろうこの部分をみなさんがクリアすれば、本書の後半部分を間違いなく楽しめ、天文学の基礎を身につけることができるだろう。