ばら星雲の空洞の謎を解く新たな数値モデル

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ばら星雲の中心にある空洞の年齢や大きさが理論的予測と合わないという未解決の問題について、従来の矛盾を解決する新たなモデルがコンピューターシミュレーションで示された。

【2018年2月20日 University of Leeds

冬の大三角の中、いっかくじゅう座に位置する「ばら星雲」(NGC 2237, 2238, 2239, 2246)は地球から約5000光年の距離にある散光星雲で、大輪のバラの花のような美しい形で有名だ。写真からわかるように、この星雲の中心部には特徴的な空洞がある。

ばら星雲
ばら星雲(提供:投稿画像ギャラリーよりtohikeさん撮影)

ばら星雲は塵や水素、ヘリウムなどの電離ガスからなる巨大な分子雲の一部で、星雲の中心に存在する散開星団には大質量星がいくつか存在する。これらの大質量星から放出される恒星風や紫外線によって、ばら星雲の形や中心の空洞が形作られたと考えられている。

しかし、これまでの研究で、空洞の年齢の推定値が星雲の中心星の年齢に比べてかなり若いことや、中心星が星雲に及ぼす影響から考えられるサイズに比べて空洞が小さすぎることがわかっている。「ばら星雲の中心星団を形作っている大質量星の年齢はおよそ数百万歳で、現在は寿命の半分ほどを過ぎています。これらの星々が生まれてから現在まで恒星風を放出してきた時間の長さを考えると、ばら星雲の空洞は今のサイズより10倍くらい大きくてもよいはずなのです」(英・リーズ大学 Christopher Wareingさん)。

Wareingさんたちの研究チームは、スーパーコンピューターを用いた数値シミュレーションによって、ばら星雲が形成された初期の分子雲は球状や厚い円盤状ではなく「薄いシート状」だったらしいことを見出した。分子雲が薄い構造をしている場合、大質量星から放出される恒星風が分子雲のシートの厚み方向に効率よく抜けていくため、中央に作られる空洞が比較的小さなサイズにとどまるものと考えられる。

「ぼこぼこした球形、厚くてフィラメント状の構造を内部に持つ円盤、薄い円盤など、さまざまな分子雲のモデルからスタートして、恒星風の影響と星雲の形成過程をシミュレーションしました。その結果、実際の中心星の年齢や恒星風の強さに見合う時間でばら星雲の外観や空洞の大きさ、形、磁場の方向などをうまく再現できたのは、最初の分子雲が薄い円盤の場合でした。作為的に似せようとしたわけではないにもかかわらず、星雲の物理的な形状についての観測データをここまで正確に再現できる数値モデルが得られたのは驚くべきことです」(Wareingさん)。

分子雲の断面のシミュレーション画像
分子雲の断面のシミュレーション画像。中心星から放出された恒星風(青)がシート状の分子雲(赤)に対して垂直な方向に抜けている(提供:C. J. Wareing et al., 2018, MNRAS)

「現在稼働中の位置天文衛星「ガイア」によるサーベイ観測のデータも活用しました。星雲中の明るい星々の運動データをモデルに加えたおかげで、ばら星雲の中でそれぞれの星が果たしている役割について新たに知ることができたのです。次は天の川銀河の中にある同様の星雲を数多く調べ、それらの形状がどうやって作られたのかを明らかにしていく予定です」(Wareingさん)。

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