宇宙に金属鉄は少ない、微小重力実験で検証

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観測ロケットを用いた微小重力実験から、地上実験の結果とは異なりガス中の鉄同士はくっつきにくいこと、つまり金属鉄は宇宙空間において形成しにくいことが示された。

【2017年1月25日 JAXA/ISAS

星間空間に存在するダスト(塵)粒子は星・惑星系形成の構成要素となり、星間空間で分子の形成を手助けするなど星間空間の物理・化学過程に重要な役割を果たす。ダスト粒子は様々な元素で構成されており、そのなかでも鉄を含むものは、星間空間で分子の形成を促進する触媒として作用すると考えられている。

ダスト粒子中の鉄の存在形態は金属鉄や酸化鉄など様々で、それぞれ性質が異なる。天の川銀河内の天体に対する観測を用いたこれまでの研究では、鉄が酸化鉄、炭化鉄、硫化鉄として含まれていると考えると、銀河円盤の星間空間に存在するはずの鉄の量に足りないということが示されていた。つまり、それ以外の形態が主要であると示唆される。

北海道大学の木村勇気さんたちの研究チームは、粒子中の鉄が金属鉄として星間空間に存在する可能性を検証するため、微小重力環境で鉄のガスが固体になる実験を行った。木村さんたちは2012年12月に観測ロケットS-520-28号機を打ち上げ、そこで得られる約8分間の微小重力下(地上重力の約1万分の1)で鉄がガスから固体へと変化する過程に注目した。

観測ロケットS-520-28号機の打ち上げ
2012年12月17日に行われた観測ロケットS-520-28号機打ち上げの様子(提供:北海道大学/JAXA)

取得したデータから核生成(物質の状態が変化するきっかけとなる現象)の温度と濃度を決定し、鉄のガスの冷却率などから鉄同士の付着率(くっつき易さ)を見積もったところ、付着率は0.002%以下と非常に小さかった。地上の実験では付着率が1%から100%と見積もられいるが、これと大きく異なる結果である。

今回の実験結果は、星間空間では鉄同士はくっつきにくいこと、すなわち金属鉄を作りにくいということを示すものだ。ダスト粒子で鉄は金属ではなく、何らかの化合物として含まれているか、もしくは不純物として他の粒子にくっついているのではないかと推測される。星の中で生成した鉄が冷え固体となる過程や、それがダスト粒子に取り込まれる過程には、多様な分子や化学過程が関係しているのかもしれない。

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