水星の磁場形成のしくみを解明か

【2008年5月9日 University of Illinois

水星の磁場は約30年前にマリナー10号によって発見されたが、その正体はなぞのままであった。2007年には磁場が液状の核によって形成されているとわかったものの、いまだに核の組成や磁場形成の詳しいメカニズムなどはよくわかっていない。今回、水星の核の中で磁場を発生させるメカニズムが実験によって確かめられた。


(水星探査機メッセンジャーがとらえた水星の画像)

水星探査機メッセンジャーが、2008年1月にとらえた水星。クリックで拡大(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Carnegie Institution of Washington)

水星には、地球と同じように磁場が存在する。しかし、その強さは地球の100分の1ほどしかなく、その理由を説明できるモデルはなかった。

磁場が形成されるメカニズムを知るには、惑星の中心にある核で何が起きているのか、その物理的な状態を知る必要がある。イリノイ大学の大学院生Bin Chen氏は、「地球から行われた最近の観測で、水星全体が揺れ動いているのが検出されました。これは、少なくとも核の一部が溶解していることを示しています。しかし、表面における地震のデータがない限り、わたしたちは核についてほとんど何もわからないのです」と話している。

水星の核のほとんどは鉄でできているが、硫黄も存在すると考えられている。硫黄は鉄に混ざると融点を下げるので、水星の磁場形成に重要な役割を果たすことになる。米・イリノイ大学とケース・ウエスタン・リザーブ大学の研究チームは、鉄と硫黄から成る混合物の性質を高温・高圧下で調べた。

その結果、融けた混合物を冷却すると鉄どうしがくっついて立方体の結晶状になり、水星の中心へ落ち込むことが明らかになった。このとき、硫黄を多く含んだ軽い液体が逆に上昇する。この対流により電流が流れ、水星の磁場が形成されているというのである。

また、研究チームによれば、鉄片の沈み込みは水星内部にある特定の2つの領域で起きている可能性が高い。これが事実であれば、水星は太陽系内の岩石惑星や衛星としては、ほかに類を見ない特徴をもっていることになる。

水星の内部

水星は、地球と同じ岩石型の惑星で、太陽系ではもっとも小さな惑星です。内側から核、マントル、地殻でできています。核がとても大きいのが特徴で、直径は水星全体の4分の3以上、質量は水星全体の80パーセントに達するといわれます。(「太陽系ビジュアルブック・改訂版」水星はこんな星より一部抜粋)