冥王星フライバイから2か月、ニューホライズンズから本格的にデータ送信開始
【2015年9月14日 NASA】
7月14日に探査機「ニューホライズンズ」は冥王星をフライバイ(接近通過)し、その際に膨大な画像やデータを取得した。これまでに公開された画像などは、その情報のうちほんの一部から作成されたものだ。いよいよ先週末からニューホライズンズは、本格的にデータ送信を開始した。完了までには約1年かかる見込みである。
約1か月半ぶりに公開された最新画像は、1ピクセルあたり400mの高解像度だ。そこには砂丘のような地形や、山岳地帯から平原に向かってじわじわと流れる窒素の氷河、冥王星の表面を流れる物質によって削り取られてできたと思われる峡谷、さらには無秩序に乱立する山々などが見られる。
7月14日に8万kmの距離からとらえられたクトゥルフ領域(右下の暗い領域)とその上のスプートニク平原(地名はどちらも非公式)(提供:NASA/Johns Hopkins University Applied Physics Laboratory/Southwest Research Institute、以下同)
「冥王星の表面はどこから見ても、火星と同様に複雑です。雑然と存在する山々は、スプートニク平原内の凍った窒素の堆積物中に浮かぶ巨大な水の氷塊かもしれません」(ニューホライズンズ研究チーム Jeff Mooreさん)。
7月14日に8万kmの距離からとらえられた冥王星の表面。幅350kmの領域に暗く深くえぐられたような古いクレーターと平らな若い地形が見られる
「見えているものが砂丘(のようなもの)だとするなら、完全に誕生当時のままの状態でしょう。なぜなら、今日の冥王星の大気は非常に薄いからです。過去に冥王星が今よりは厚い大気を持っていて砂丘が形成されたか、あるいは私たちの知らないプロセスが働いてできたかのいずれかでしょうが、これは難題です」(ニューホライズンズ研究チーム William B. McKinnonさん)。
また、冥王星の大気のもやが予想以上に多くの層を持っていることも明らかになった。さらに、もやが冥王星の夜側の地形をほのかに照らしてくれているおかげで、太陽光が直接は当たらなかったところも観測でき、研究者が予想しなかったボーナス・データとなった。
最接近から約16時間後に77万kmの距離からとらえられた冥王星の大気のもや。画像処理を進めた右の画像では、もやの多層構造や、夜側の冥王星の地形(右上)が見える。クリックで拡大
ニューホライズンズは現在、地球から約50億kmの距離を航行しており、冥王星からはすでに7300万km以上も遠ざかっている。探査機の状態は良好で、システムもすべて正常に稼働中とのことだ。
〈参照〉
〈関連リンク〉
- 探査機ニューホライズンズ: http://pluto.jhuapl.edu/
- NASA: http://www.nasa.gov/
- 月探査情報ステーションブログ: http://moonstation.jp/ja/blog/
- 星ナビ.com:
- 2015年9月号 News Watch「太陽系の果てで息づく冥王星」
- 2015年7月号 特集「ニューホライズンズ」「冥王星を探す・撮る」「発見者クライド・トンボー」
- こだわり天文書評:
- 「太陽系はここまでわかった」
- 「太陽系ビジュアルブック 改訂版」
- 「なぜ、めい王星は惑星じゃないの?」
- 「新しい太陽系」
- 「Planets Beyond - Discovering the Outer Solar System」
- 「IS PLUTO A PLANET?」
- 「Pluto Files」
- アストロアーツ 投稿画像ギャラリー: 冥王星
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