時速300万kmで広がる、天の川の巨大バブル

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天の川銀河中心から広がる巨大バブルの観測により、構造内のガスの広がる速度や温度などがわかった。この「フェルミバブル」を作り上げた爆発現象の詳細が明かされつつある。

【2015年1月6日 HubbleSite

2010年、NASAのガンマ線天文衛星「フェルミ」が天の川銀河の円盤から垂直方向にそれぞれ3万光年も広がる2つの巨大なバブル構造を発見した。「フェルミバブル」とも呼ばれるこの構造は、200万年以上前に銀河中心部で起こった爆発的なガス放出により作られたものと考えられている。その引き金としては、(1)星が次々に生まれ、次々に超新星爆発を起こした、(2)単独の星または星の集団が銀河中心のブラックホールに落ちこんだ、といったことが候補として挙げられる。いずれにせよ、銀河の長い歴史の中では瞬間的な出来事であり、繰り返し起こっているのかもしれない。

Andrew Foxさん(米宇宙望遠鏡科学研究所)らの研究チームでは、バブルの向こう側にあるクエーサー(明るく光る遠方の銀河核)をハッブル宇宙望遠鏡で紫外線観測し、その光の分析からこの構造内のようすを探っている。

バブルごしに見た遠方クエーサーの光から、バブル内のガスを調べる
バブルごしに見た遠方クエーサーの光から、バブル内のガスを調べる(提供:NASA, ESA, and A. Feild (STScI))

その初期成果から、バブル内のガスは時速300万kmで広がっていること、ケイ素や炭素、アルミニウムといった星生成の名残りである重元素が豊富であること、温度はおよそ摂氏9700度とそれほど高くないことがつきとめられた。この温度については、銀河円盤内の星間ガスの流入により冷えているものと考えられる。

研究では20個のクエーサーについて同様の観測を行ってバブル全体の総質量や複数箇所での速度を調べ、フェルミバブルを作り上げた現象を解明しようとしている。