MAXIとXRISMの連携で増光中のX線連星の観測に成功

このエントリーをはてなブックマークに追加
X線連星の観測から、中性子星の強い磁場と伴星から降り積もる物質が影響を及ぼし合う領域の近くで、鉄輝線が放射されている可能性が示された。強磁場という極限環境における物質の振る舞いの理解につながると期待される成果だ。

【2026年10月30日 愛媛大学】

コンパクト天体(小さく高密度の天体)の一種である中性子星は、強い磁場を持つ。この磁場は地球上では再現できないほど強く、中性子星は強い磁場と物質が影響を及ぼし合う際に生じる物理現象を調べることができる自然の実験場ともいえる。

中性子星と普通の恒星からなる連星ではX線が観測されるが、一部のX線連星では突発的にX線での増光現象が起こることがある。この増光は、伴星から中性子星に物質が降り積もることで起こる。このとき、中性子星の強い磁場と降り積もる物質は互いに影響を及ぼし合う。

中性子星を含むX線連星の想像図
中性子星を含むX線連星の想像図。伴星から供給された物質が降着円盤を形成し、中性子星に降り積もる様子を表している(提供:JAXA、一部改変)

愛媛大学の高木利紘さんを中心とする研究チームは、ケンタウルス座の方向、約1万光年の距離にある、強い磁場を持つ中性子星を含むX線連星「1A 1118-61」に注目した。今年初め、このX線連星が約17年ぶりにX線で増光したとの報告を受け、研究チームが国際宇宙ステーションの「きぼう」日本実験棟に設置された全天X線監視装置「MAXI」の観測データを詳しく調べたところ、MAXIも1月12日からこの天体を検出していたことがわかった。

増光前後の1A 1118-61
(上左)増光前。中央は1A 1118-61のそばに位置するパルサーのCen X-3で、1A 1118-61はそのやや下方にある。(上右)増光後の1A 1118-61。
(下)1A 1118-61のX線強度(提供:JAXA MAXIサイエンスニュース No.083)

さらに、この天体のX線強度が観測史上最大になる可能性が予測されたことから、研究チームはX線分光撮像衛星「XRISM」でもこの連星を観測した。XRISMによる観測はX線光度がピークに達した約10日後の2026年2月7日に実施され、このときのX線強度は最大値の半分程度と比較的明るい状態にあった。

XRISMの分光装置「Resolve」で得られた観測データを詳しく分析したところ、鉄原子からの輝線が幅の異なる2つの成分でできていることがわかった。1A 1118-61は、高速自転する高温星(Be星)とコンパクト天体で構成される「Be型X線連星」で、中性子星はパルサーとして観測されている。今回の観測は、増光中のBe型X線連星パルサーの鉄輝線を高精度で分解した史上初のものだ。

鉄輝線のうち幅の狭い成分は、伴星の表面やその周囲の物質から放射されていると考えられる。一方、広い成分は、中性子星の強い磁場が支配する磁気圏の外縁を周回する物質から輝線が放射された場合に予測される幅と一致していた。鉄輝線の一部が、中性子星の強い磁場と降り積もる物質が影響を及ぼし合う領域の付近から放射されている可能性を示す結果である。

鉄輝線のスペクトル/鉄輝線の放射源のイラスト
(上)Resolveで得られた鉄原子輝線のスペクトル。観測データ(黒)と、幅の異なる2成分のモデル(緑)、2成分を足し合わせた結果(赤)を重ねて表示。
(下)中性子星近傍における、降り積もる物質の分布と鉄原子輝線の放射源の想像図(提供:愛媛大学リリース)

今回の成果は、MAXIとXRISMの連携観測が、中性子星が作る強磁場環境を調べる新たな手法として有用である可能性を示している。こうした研究により、強磁場下における物質の振る舞いの理解が進むことが期待される。

関連記事