星形成ハブにおける巨大な星の誕生を促進する低密度ガス流

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星形成領域におけるフィラメント間の低密度ガスとフィラメント内の高密度ガスの調査から、高密度ガスだけでなく低密度ガスも、大質量星の形成に重要な役割を果たしていることがわかった。

【2026年8月7日 国立天文台 野辺山宇宙電波観測所

恒星は巨大なガスと塵からなる分子雲の内部で形成される。分子雲の内部では星の材料となる濃い星間ガスがひも状に集まった領域「フィラメント」が形成され、フィラメント同士が結合した「ハブ」と呼ばれる高密度な中心部に流れ込むように集まり、星団や大質量星が生まれる。

これまでの研究では、高密度ガスがフィラメントに沿ってハブに流れ込むことが示されていた。一方で、フィラメント間の領域を満たす大量の低密度ガスが大質量星の形成に与える影響や役割はあまり知られておらず、星形成に必要な物質を集める過程は十分に解明されていなかった。

九州大学高等研究院のJihye Hwangさんを中心とする研究チームは、野辺山45m電波望遠鏡を用いて、約2700光年と比較的近距離にある大規模な星形成領域(巨大分子雲)「いっかくじゅう座R2」にあるハブ-フィラメント構造のガスの動きを調査した。

いっかくじゅう座R2領域
いっかくじゅう座R2領域(撮影:Ichiro Itagakiさん

研究チームは3つの高密度フィラメントと3つのフィラメント間領域を特定し、高密度フィラメント内のガスがフィラメント間領域にあるガスより速い速度でハブに流れ込むことを明らかにした。同時に、フィラメント間領域にあるガスの少なくとも30%が近くにあるフィラメントの外側から垂直に流入し、その後ハブへと流れ込んでいる可能性も示された。低密度ガスを含めたハブへの流入量の見積りは、高密度フィラメントのみからの推定値より約50%多くなるという。

いっかくじゅう座R2に流れ込む分子ガス分布
いっかくじゅう座R2に流れ込む分子ガス分布の模式図。いっかくじゅう座R2のハブ-フィラメント系における水素分子ガスと運動速度の分布を示している。高密度フィラメント(緑)およびその周辺の低密度なフィラメント(青)間領域からガスが中央のハブに流れ込んでいる(提供:Jihye Hwang、中村優梨佳)

また、恒星を生み出す高密度でコンパクトなガスの塊(高密度コア)の分布状況を調査したところ、ハブの内部にあるコア部分はその外側よりも質量が大きく高温だった。ガスが継続的に流入することで、大質量星が形成されやすい高密度環境が作られていることを示唆する結果だ。

今回の観測結果は、フィラメント間の低密度ガスが高密度構造間の領域を埋めるだけの存在ではなく、ハブ-フィラメント系における重要な構成要素であり、高密度フィラメントへの物質供給やハブの成長にも直接貢献していることを示している。星のゆりかごである分子雲が大質量星の形成に必要な物質を集積する仕組みについて、その全体像を提示するものだ。宇宙における大規模な物質循環を理解する上で、高密度ガスと低密度ガス両方の状態を調査することの重要性も示している。