史上最も遠い電波銀河を発見

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約128億光年の距離にある電波銀河が発見され、電波銀河の最遠記録が約20年ぶりに更新された。

【2018年8月13日 NOVA

オランダ・ライデン天文台のAayush Saxenaさんを中心とする国際研究チームが、インドの巨大メートル波電波望遠鏡(GMRT)で行われた全天の電波サーベイ観測のデータから、へび座の方向に位置する電波銀河「TGSS J1530+1049」を発見した。

遠くにある天体から届く光は、宇宙膨張によって引き伸ばされ、波長が長くなってスペクトルが赤い側にずれる。このずれ(赤方偏移)は距離が遠い天体ほど大きくなるので、赤方偏移の度合いから天体までの距離を知ることができる。そこで、銀河までの距離を求めるために米・ハワイのジェミニ北望遠鏡と米・アリゾナ州の大双眼望遠鏡(Large Binocular Telescope; LBT)で分光観測が行われ、銀河の赤方偏移の値が5.72と求められた。

これは宇宙年齢が現在の7%、つまりたった10億歳だった時代にあたる、128億光年彼方にこの銀河が存在している(128億年前の宇宙からの光が届いた)ことを表している。電波銀河としては、1999年に発見された赤方偏移5.19(約127億光年)という記録を更新する、観測史上最も遠い天体の発見となった。

TGSS J1530+1049
電波銀河「TGSS J1530+1049」。LBTで撮影された近赤外線画像(カラー)に米国の電波望遠鏡VLAで観測された電波強度のデータ(白の等高線)を重ねたもの(提供:Leiden Observatory)

巨大な電波銀河の中心には周囲のガスや塵を活発に吸い込んでいる超大質量ブラックホールが存在していて、このブラックホールから高エネルギーのジェットが光速に近い速度で噴出している。電波銀河では、こうしたジェットが電波の波長ではっきり観測される。

TGSS J1530+1049のような、きわめて遠方にある電波銀河の発見は、このような活動銀河の形成や進化を理解する上で重要なものとなる。さらに、初期宇宙で銀河の成長を促したり抑えたりすると考えられている「原始ブラックホール」がどのようにしてできたのかについても情報をもたらしてくれるはずだ。「今回の銀河のような、遠方の宇宙にあるきわめて大質量の銀河がどうやってこれほど成長したのかという点に非常に興味があります」(Saxenaさん)。

「明るい電波銀河には超大質量ブラックホールが存在しています。こうした天体が初期宇宙で見つかるのは驚くべきことです。これほど質量の大きなブラックホールが非常に短い時間で成熟したことになるからです」(ライデン天文台 Huub Röttgeringさん)。

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