アルマ望遠鏡のミリ波観測で、暗い銀河を15個発見

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【2013年6月3日 国立天文台

アルマ望遠鏡によるミリ波観測で、これまで知られていなかった暗い銀河が15個見つかった。従来のミリ波・サブミリ波観測ではとらえられなかった、より「一般的」な銀河と考えられ、宇宙に存在する銀河の全体像の解明に一歩近づく成果である。


くじら座方向の観測領域と、今回見つかった銀河

くじら座方向の観測領域と、今回見つかった銀河の従来観測との比較。観測画像をもとにしたイメージイラスト。クリックで拡大(提供:ALMA (ESO/NAOJ/NRAO)、京都大学)

京都大学大学院の研究チームが南米チリのアルマ望遠鏡での観測により、これまで見つかっていなかったひじょうに暗い銀河を15個発見した。

ミリ波・サブミリ波(電波の一種で、比較的波長が短い)観測では、可視光や近赤外線では宇宙空間のダスト(塵)にさえぎられて見逃されている多くの銀河を見つけることができる。これらのミリ波・サブミリ波は、ダストに吸収された光が再放射されたものや、銀河中の豊富なダストが放つ赤外線の波長が引き伸ばされたものである。

従来ミリ波・サブミリ波で見つかってきた銀河は、ダストに厚く覆われ星形成がひじょうに活発な、いわば特殊な銀河だった。今回アルマ望遠鏡を使った高感度のミリ波観測により、ダストが豊富であるものの星形成活動は穏やかな、より「一般的な」銀河をとらえることができたのだ。

「ミリ波・サブミリ波で特別に明るい銀河と、一般的な銀河をつなぐ天体が検出されたことで、銀河進化の全体像に迫る大きな一歩になりました」(太田耕司教授)。

さらにこの研究から、現段階で「宇宙背景放射」として含まれるミリ波・サブミリ波放射のおよそ80%は、このような未検出の「一般的な銀河」だと示唆される。

廿日出文洋(はつかで ぶんよう)研究員は「アルマ望遠鏡を使ってさらに暗い銀河の観測を行うとともに、星形成活動やダスト量などを詳しく調べ、銀河進化の全体像を明らかにしたい」と今後の展望を語っている。