小嶋さん、いて座に明るい重力マイクロレンズ現象を発見

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群馬県の小嶋正さんが7月13日、いて座方向で発生した重力マイクロレンズ現象とみられる増光現象をとらえた。

【2018年7月17日 VSOLJニュース

著者:前原裕之さん(京都大学)

群馬県嬬恋村の小嶋正さんが7月13日(世界時、以下同)にいて座の中に発見した増光天体は、新星ではなく重力マイクロレンズ現象の可能性があることがわかりました。

小嶋さんは2018年7月13.494日(日本時では20時50分ごろ)に焦点距離200mmのレンズとデジタルカメラを用いて撮影した画像から、10.8等に増光している天体を発見しました。小嶋さんの観測によるとこの天体は7月2日に撮影した画像には写っておらず、またこの天体の位置はUSNOカタログのRバンドで15等の天体の位置とほぼ一致することから、最近になって4等級も明るくなった天体であることがわかりました。

この天体の位置は以下のとおりで、いて座γ星の近くです。

赤経  05h07m42.72s
赤緯 +24°47′56.3″ (2000年分点)

確認観測画像
確認観測画像(撮影:板垣公一さん)

重力マイクロレンズ現象の位置
重力マイクロレンズ現象の位置。画像クリックで星図拡大(「ステラナビゲータ」で星図作成)

超新星のサーベイを行っているAll-Sky Automated Survey for Supernovae(ASAS-SN)の観測によると、この天体はもともと14.6等ほどでしたが7月4日には13.9等、7日に13.3等、10日に12.8等、11日に12.5等、12日には12.0等と、小嶋さんによる発見以前から明るくなり始めていたことが明らかになりました。さらに、ASASSNによって観測された増光の様子が重力マイクロレンズ現象による明るさの変化と矛盾しないものであることがわかりました。

重力マイクロレンズ現象は、星と私たちの間に別の天体があり、この天体の見かけの方向が背後の星とほぼぴったりと重なった場合に、その天体の重力によって背後の星からの光が曲げられ集光されることで、星が明るくなったように見える現象のことです。天の川銀河の中心方向の星や、大小マゼラン雲の星の観測から、これまでにも暗い例は数多く発見されていますが、小望遠鏡でも見ることができる明るさのものは、これまで知られている中では2006年10月に多胡さんがカシオペヤ座の中に発見したもの(7.5等、参照:「多胡さん発見の変光星はマイクロレンズ現象?」)や、2017年10月に小嶋さんがおうし座の中に発見したもの(10.8等、参照:「小嶋さん、明るい重力マイクロレンズ現象を発見」)など数えるほどしかなく、非常に珍しい現象と言えます。

これまでの観測によると、この天体は7月14日には10.7等と発見時とほぼ同じ明るさでしたが、15日には11等台まで暗くなったことがわかりました。重力マイクロレンズ現象であれば、10日ほどで14等程度まで暗くなっていくと思われ、今後の明るさの変化が注目されます。