合体銀河のチリに隠された活動的な超巨大ブラックホール

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【2011年4月26日 すばる望遠鏡

銀河同士がぶつかってできる合体銀河の中に超巨大ブラックホールが発見された。これまで存在は予測されていたものの、すぐにチリに覆われてしまうため撮像観測はできていなかった。今回の発見は銀河の進化を解明する手がかりになると期待されている。


(ブラックホールがチリに隠されているイメージ図)

ブラックホールがチリに隠されているイメージ図。左はまだドーナツ型でしかチリが覆っていないため、上下からもれ出た光で観測が可能となっている。時間が経つと右のように球形にチリが覆ってしまうため、可視光では見ることができず、赤外線で観測する必要がある。下のブラックホールのサイズが数光年以下。クリックで拡大(提供:NASA/CXC/SAO、および国立天文台/石川直美による図を改変)

(すばる望遠鏡とジェミニ南望遠鏡での観測結果の画像)

すばる望遠鏡とジェミニ南望遠鏡での観測結果。左は参照のために撮影した点源とみなせる恒星。中央は恒星と同じくらい大きいが、非常に明るく、超巨大ブラックホールの存在を示唆している。右は広がった構造を持つ銀河で、星生成により光っていると思われる。クリックで拡大(提供:国立天文台)

複数の恒星が集まって形成される銀河は、宇宙で他の天体の影響を受けずに存在しているわけではなく、他の銀河などの重力の影響を受けて存在している。このような銀河の中には互いに接近しすぎて、衝突・合体してできたと思われる銀河も見つかっている。合体銀河では、合体に伴うガスの圧縮などの影響で星の形成が活発に起こっており、その影響で強い赤外線を放射していることがわかっている。このような銀河を赤外線銀河と呼んでいる。

また、多くの銀河の中心部には超巨大ブラックホール(超大質量ブラックホール)が存在していることがほぼ確実と言われており、銀河が合体する際には、このブラックホールに大量のガスが流れ込むことで銀河中心部が激しく輝くことが知られている。このときの光が周辺のチリを暖めることで、赤外線の放射をより強くしていると考えられていた。

しかし、このような超巨大ブラックホールは短時間でチリやガスを周囲に集めてしまうため、可視光線では観測できず、中間赤外線という波長を使うと観測可能になる(画像1枚目)。すばる望遠鏡とジェミニ南望遠鏡を用いて18個の合体赤外線銀河を観測したところ、いくつかに超巨大ブラックホールが見つかった。赤外線源としては星形成によるものと超巨大ブラックホールの2つがあるが、明るさの度合い(注1)で区別できる。得られた画像の明るさを調べたところ、18個のうち10個は超巨大ブラックホールが存在する可能性が高く、残りの8個は星形成で説明可能ということがわかった。

合体赤外線銀河のブラックホールの存在を研究することは分光観測(注2)ですでに成功していたが、今回の明るさで観測する撮像観測(注3)ではより直接的な証拠をもたらすことができるので、近傍の銀河を調べるには非常に強力な手法である。また、今回の撮像観測の結果から、以前の分光観測による探査も信頼できることが示されたので、遠方銀河については分光観測で調べられることも確認された。

このような合体赤外線銀河は、初期宇宙では宇宙全体の星形成やブラックホールの大部分を担っていることがわかっている。分光と撮像という2種類の手法を用いて近傍から遠方までの合体赤外線銀河を調べることで、初期宇宙における星の形成史や超巨大ブラックホールの成長史の解明が進むと期待される。

注1:「明るさの度合い」 正確には表面輝度。通常1平方秒角あたりの明るさを指す。同じ明るさ(光度)でも写真上の大きさが大きいほど表面輝度は小さい。

注2:「分光観測」 どのような起源の光が出ているかを観測することができる。

注3:「撮像観測」 明るさを測定、比較することができる。

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