大質量ブラックホールをもつ銀河同士が、50億光年かなたで衝突

【2005年2月1日 KECK OBSERVATORY NEWS

50億光年かなたで、大質量ブラックホールを中心にもつ銀河同士の衝突を示す証拠が得られた。公開された画像中には、単独の銀河に2つの核が捉えられている。

(単独の銀河に存在する2つの核を捉えた画像)

単独の銀河に存在する2つの核。クリックで拡大(提供:UCSC, UCLA, W. M. Keck Observatory)

観測を行ったのはハワイにあるケック望遠鏡だ。口径はハッブル宇宙望遠鏡の4倍で、補償光学と組み合わせることにより、近赤外線の波長ではハッブルの4倍の分解能を得られる。この精度で観測された銀河の形状とチャンドラX線観測衛星で捉えられた2つのX線源とをあわせると、最近銀河同士の合体があったと考えられる。X線は銀河中心で活発に物質を飲み込む大質量ブラックホールの存在を示しており、銀河の形がつぶれているのは、合体によって大量の物質が銀河の中心に向かって移動しているためだろう。

また、専門家を驚かせているのは、この銀河の衝突後に見られるのが年老いた星に支配された2つの核で、多くの若い星が形成されるようすが見られないということだ。通常、銀河の合体ではガス雲の圧縮と衝撃により新しい星の形成が起こるが、それが見られないのである。星形成が見られない原因は、合体前の銀河で星の形成のほとんどが終わっており、新しい星形成のために必要な大量のガスが残されていないためだと考えられている。