彗星の正体は、「凍った泥だんご」?

【2005年10月20日 ESA News

7月4日のディープインパクトの後のテンペル彗星(9P/Tempel 1)を、ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の彗星探査機ロゼッタが観測したところ、よく「汚れた雪だるま」にたとえられる彗星の核は、むしろ「凍った泥だんご」に近いことが示唆された。

ディープインパクト時のテンペル彗星(9P/Tempel)の画像 ハッブル宇宙望遠鏡の捉えた彗星の噴出の画像

(上)ディープインパクト時のテンペル彗星(9P/Tempel)の画像(提供:NASA/JPL-Caltech/UMD)、(下)ハッブル宇宙望遠鏡の捉えた彗星の噴出の画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, P. Feldman (Johns Hopkins University), and H. Weaver (Applied Physics Lab))

彗星は、太陽系の外縁から来た天体であり、一生の大部分を太陽からの熱や光の影響をほとんど受けずにすごしている。そのため、彗星が作られたときの組成はほぼ維持され、太陽系の起源に関する重要な情報を含んでいると考えられている。

今年2005年7月4日、NASAがテンペル彗星の調査を目的とした「ディープインパクト」計画を実行し、衝突機を彗星へ命中させたのは、まだ記憶に新しい。

重量370キログラムの銅製の衝突機は、秒速10.2キロメートルの速度で彗星に衝突。衝突によって、直径6キロメートルほどのテンペル彗星に、直径100から125メートルのクレーターができるとともに、内部の新鮮な物質が放出されると予想され、注目されていた。はたして、4500トンもの水の氷が蒸気となって噴出したが、それを上回る量のちりが放出されたことに研究者たちは驚いた。

観測を行ったのはESAの彗星探査機、ロゼッタ。ロゼッタの最終目的は、チュリューモフ・ゲラシメンコ彗星(67P/Churyumov-Gerasimenko)に到達することだが、その長旅の最中、テンペル彗星から8000万キロメートルという良い位置でディープインパクト前後の観測をすることができた。ロゼッタに搭載された撮像システム、OSIRISによって様々な波長でテンペル彗星の核のまわりにできたコマ(大気)の観測が行われ、水蒸気やちりがどれだけ含まれているかがわかったのである。

吹き飛ばされた水蒸気とちりの量から、元々の彗星の組成を考えると、氷よりもちりが占める割合が多いことがわかった。従来の彗星核のイメージといえば、大部分が氷でできていて、それにほんの少しちりが混じっているというもの。「汚れた雪だるま」という言葉が頻繁に使われている。しかし、ディープインパクトとそれを観測したロゼッタの結果からは、たくさんのちりが、氷によって結びついている姿が浮かぶ。ひょっとすると、今後は「凍った泥だんご」と言い換えなければならないかもしれない。


彗星は、約46億年前に太陽系ができたとき、惑星になれなかった小天体と考えられています。つまり、太陽系が誕生したときの状態をとどめた、原始太陽系時代の「化石」なのです。(「太陽系ビジュアルブック」(彗星 - 太陽系の旅人)より一部抜粋

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