ディープインパクト最新情報「衝突の閃光」を捉えた

【2005年7月4日 アストロアーツ】 7月6日 更新(No.1〜No.4)

2005年1月13日に打ち上げられた彗星探査機「ディープインパクト」の衝突機が、7月4日午後2時50分(日本時)見事にテンペル彗星(9P/Tempel)への衝突を成功させた。NASAのディープインパクト計画は、目標天体であるテンペル彗星の中心核にインパクター(衝突機)を衝突させ、表面にできるクレーターや、内部から噴出する物質を観測する計画だ。4日の衝突の成功後、観測結果の報道が続いている。

こちらのページでは、この計画の最新ニュースを随時紹介していきます。


<7月6日 No.1> ディープインパクトによる閃光

(衝突時に捉えられた閃光の画像)

フライバイ機が背後から捉えたテンペル彗星の画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UMD )

大成功を収めた「ディープインパクト計画」の画像の公開が相次いでいる。インパクター(衝突機)は、秒速10キロメートルもの高速でテンペル彗星に突入したのだが、この瞬間カメラのフラッシュライトのように閃光が放たれ、その様子をフライバイ機(探査機本体)が彗星の背後から撮影した。衝突による熱は数千度にもなり、インパクターは蒸発し、彗星の物質と共に明るく輝いたのである。NASAジェット推進研究所(JPL)のディープインパクトプロジェクト・マネージャーはこう語る。「百聞は一見にしかずというが、衝突のときに撮影された写真を見れば、百科事典にもなるほどの情報が得られるだろう。」

また、撮影時の彗星表面からの距離は一番近いもので約30キロメートルで、解像度は4メートル以下である。プロジェクトの主任研究者は、「確かにこのプロジェクトに加入した際には、彗星を近距離で捉えたいと願っていたが、まさかこれほどまでに接近した画像が得られるとは」とプロジェクトの成功とその成果に喜びを隠せないようだ。


<7月6日 No.2> ハッブル宇宙望遠鏡が捉えた、ディープインパクト

(ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたテンペル彗星の画像)

ハッブル宇宙望遠鏡が捉えたテンペル彗星の画像。クリックで拡大(提供:NASA, ESA, P. Feldman(John Hopkins University), and H. Weaver(Joohn Hopkins University Applied Physics Lab)

衝突の瞬間に観測の目を向けていた望遠鏡の一つである、ハッブル宇宙望遠鏡による可視光画像も公開された。画像の撮影は、ハッブル宇宙望遠鏡に搭載された高解像度の高度探査カメラ(ACS)によるもの。

1枚目は、衝突一分前のテンペル彗星の画像だ。ハッブル宇宙望遠鏡をもってしても、彗星の小さな核(幅14キロメートル、長さ4キロメートル)を分離することはできない。一方、2枚目の衝突10分後の写真では、彗星は4倍もの明るさになっている。どうやら、このとき彗星を取り巻くちりとガスの雲が大きく広がり、より明るく輝いているようだ。

衝突62分後の3枚目の画像では、噴出物が扇状に広がっている姿が見事だ。ちりとガスは時速1,800キロメートル、旅客機の2倍ものスピードで広がっている。扇形の半径は、1,800キロメートルほどだ。


<7月6日 No.3> 3D画像で見る衝突時のテンペル彗星の明るさの変化

彗星探査機ロゼッタによるテンペル彗星の画像 (テンペル彗星の明るさの変化をプロットした3D画像:(左)公開された動画の最初の画像、(右)動画最後の画像)

(上)彗星探査機ロゼッタによるテンペル彗星の画像、(下)テンペル彗星の明るさの変化をプロットした3D画像:(左)公開された動画の最初の画像、(右)動画最後の画像)。クリックで拡大(提供:ESA/OSIRIS consortium)

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)の彗星探査機ロゼッタも観測を行った。公開された画像およびその動画は、ロゼッタに搭載されたOSIRISカメラによる画像を加工したもので、衝突後彗星の明るさが増大していく様子が捉えられている。疑似カラー画像(上)のうち、衝突前と衝突後のものを3D画像(下、明るい部分ほど高くなっている)にして比べた画像では、明確に明るさが変化する様子が示されている。

衝突から約30分の間彗星はその明るさを様々に変化させたこともわかっている。その明るさは、最大で通常の5倍にもなった。その後1時間明るさは小さく上下し、やがて非常にゆっくりと暗くなっていったようだ。

(なお、リリース元では、疑似カラー画像、3D画像が共に動画形式でも公開されている。)


<7月6日 No.4> X線宇宙望遠鏡XMM-ニュートン、テンペル彗星から弱いX線を検出

(X線宇宙望遠鏡XMM-ニュートンが捉えたテンペル彗星のX線画像)

X線宇宙望遠鏡XMM-ニュートンが捉えたテンペル彗星のX線画像。クリックで拡大(提供:ESA. Image by Pedro Rodriguez, ESAC (Spain) )

ESA(ヨーロッパ宇宙機関)のX線宇宙望遠鏡XMM-ニュートンは、衝突後のテンペル彗星から放射される弱いX線を観測した。以前の観測から彗星はX線を放射しているのではないかと疑いがもたれていた。今回観測されたものはひじょうに弱いもので、テンペル彗星がX線を放射したメカニズムを知るにはさらなる調査が必要だ。

彗星がX線を放射する理由については、2つの説がある。一つ目は、彗星のコマ(核の周囲のちりやガスの雲)に存在する中性粒子と、太陽風に運ばれてくるイオン化した粒子との間の電荷のやりとりによるというもの。もう一つは、太陽が発するX線がコマのちりに散乱されたというもので、彗星が急激に増光したときに見られる。現在考えられている可能性はこの2つだが、実際にはこの両方がかかわっているのかもしれない。


<7月4日> ディープインパクトの瞬間のテンペル彗星

(NASA TVの中継で流された、モニター越しにみるディープインパク時のテンペル彗星の画像 1) (アウトバースト後のテンペル彗星の画像 3)

(上)NASA TVの中継で流された、モニター越しにみるディープインパクト時のテンペル彗星の画像、(下)ディープインパクトから13秒後のテンペル彗星の画像。クリックで拡大(提供:NASA/JPL-Caltech/UMD )

2005年1月13日に打ち上げられた彗星探査機「ディープインパクト」の衝突機が、7月4日見事にテンペル彗星への衝突を成功させた。7月3日に彗星探査機から放出されたインパクターは、アメリカ独立記念日である7月4日、日本時間午後2時50分(米東部時間4日午前1時50分)すぎに、テンペル彗星の核への突入に成功した。

外部からの彗星観測とは違い、衝突によって彗星にどのような変化が起こるのかを調べようというこの野心的な計画の瞬間、テンペル彗星は、にわかに増光し、まぶしい姿を見せた。ほぼリアルタイムで彗星探査機「ディープインパクト」から地球に届けられた画像には、衝突によって内部からチリやガスを放出する彗星核の姿が捉えられている。

この「ディープ・インパクト」が無事成功したことをうけて、彗星とランデブー飛行を続ける探査機「ディープインパクト」による彗星の変化の様子や、同時に観測を行っているハッブル宇宙望遠鏡、他の観測衛星による画像、地上の望遠鏡群によるデータに注目が集まっている。

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