やはり人工構造物ではなかった「タビーの星」の謎の減光

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「宇宙で最も謎に満ちた星」と呼ばれる恒星「タビーの星」の不規則な減光メカニズムの解明に一歩迫る成果が得られた。

【2018年1月10日 ペンシルベニア州立大学

はくちょう座にある恒星KIC 8462852は地球から1000光年の距離にある、直径が太陽より50%ほど大きく表面温度が1000度ほど高い、ごく普通の星だ。ただし、一般的な変光星のメカニズムでは説明の付かない突発的な減光を起こすことが知られており、減光現象を最初に論文にまとめた米・ルイジアナ州立大学のTabetha Boyajianさんの名前にちなんで「タビーの星(Tabby's Star)」とも呼ばれている。元々はインターネット上の市民科学グループ「Planet Hunters」が、系外惑星探査衛星「ケプラー」の過去の観測データを解析する中で発見したものだ。

タビーの星の異常な減光については、その原因を説明する仮説がこれまでにいくつか提案されており、中には宇宙人が建設した巨大な構造物がこの星の周囲を公転しているためだというものまである。

いつ起こるかわからない減光の原因を探るには、明るさを24時間監視し続けなければならない。そこでBoyajianさんや米・ペンシルベニア州立大学のJason Wrightさんたちの研究チームは、世界中に設置された望遠鏡のネットワーク「ラス・クンブレス天文台グローバル望遠鏡ネットワーク(LCOGT)」でこの星を継続観測し、より多くのデータを集めることにした。「リアルタイムで減光を観測できれば、減光量が全ての波長(光の色)で同じかどうかがわかると考えました。減光量が波長によらずほぼ同じであれば、減光の原因は何か不透明なもの、たとえば星の周囲を公転する円盤や惑星、別の恒星、または巨大構造物などであることが示唆されます」(Wrightさん)。

観測費用はクラウドファンディングで募られ、計10万ドル以上が調達された。研究チームはLCOGTで2016年3月から2017年12月までタビーの星を観測し、2017年5月から合計4回の減光イベントを観測することに成功した。それぞれの減光イベントにはクラウドファンディングの出資者によって古代都市の名前(スコットランドのスカラ・ブライ、カンボジアのアンコール)などが命名されている。

観測結果から、タビーの星の減光量は波長ごとに異なっていることが明らかになった。「減光は塵によるものである可能性が大きくなりました。色によって減光量が違うということは、恒星と地球との間にある遮蔽物が何であれ、惑星や宇宙人による巨大構造物のような不透明なものではないことになります」(Boyajianさん)。

タビーの星の想像図
タビーの星の想像図。むらのある塵の環や彗星が星を取り巻いている様子(提供:NASA/JPL-Caltech)

「宇宙人が造った巨大構造物」が減光の原因という説は否定されたものの、減光を引き起こす正体は依然として不明のままだ。「Boyajianさんたちが提唱している、彗星のような星周物質が減光を引き起こしているといった説などいくつかの案が、観測結果を説明するモデルとして考えられています。また、恒星の光を隠しているものが存在するわけではなく、恒星自体が暗くなっているという説を唱える人もいて、これも最新の観測データと矛盾しません」(Wrightさん)。

「これはわくわくすることです。さまざまな手段でこの謎を解明する手助けをしてくれた市民科学者やプロの研究者、全ての人々に本当に感謝しています」(Boyajianさん)。

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