計算値よりはるかに弱かったブラックホールの磁場

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地球から8000光年の距離に位置する直径60kmほどのブラックホールの周囲の磁場が初めて正確に計測され、磁場の強さが過去の計算値の400分の1ほどであることが明らかになった。

【2017年12月15日 UF News

地球から8000光年の距離に位置する「はくちょう座V404星」は、太陽のような恒星とブラックホールとの連星系で、2015年にアウトバースト(爆発的な増光)を起こした(参照:「ブラックホール連星はくちょう座V404星がアウトバースト」)。

「はくちょう座V404星」の想像図
「はくちょう座V404星」の想像図。ブラックホールから噴出する両極ジェットと磁力線が描かれている(提供:Michael McAleer/UF News)

米・フロリダ大学のYigit Dalilarさんたちの研究チームは、スペイン領カナリア諸島ラ・パルマ島のロケ・デ・ロス・ムチャーチョス天文台内にある口径10.4mカナリア大望遠鏡で、この連星のアウトバーストを観測した。Dalilarさんたちが観測したような小規模なジェットを発生させるブラックホールで起こるアウトバーストは、突然起こり長くは続かない現象であり、2015年の場合もたった2~3週間しか続かなかった。同ブラックホールで同様の現象が過去に発生したのは1989年のことだ。

観測データをもとにアウトバーストの放射が衰える速度を各波長で比較し、放射領域の大きさを絞り込んだり、磁場を計測したりしたところ、磁場の強さは過去の計算値の約400分の1と驚くほど小さいことが明らかになった。

磁場の計測は、ブラックホールの磁場の働きを理解し、究極の物理環境における物質のふるまいに関する知識を深めることに役立つ。また、ほとんどすべての物質がブラックホールに吸い込まれる一方で、どのようにして光速に近い速度でジェットの粒子が噴出するのかという半世紀にわたる問題の解決の一助になるだろう。

「私たちの結果は理論モデルに新たな制限を与えます。これまでのモデルは、ジェットの流れを加速したり誘導したりする強い磁場に焦点を当てたものでした。計測結果は予想外であり、私たちが知っていると思っていた多くの事柄が修正されることになります」(米・フロリダ大学 Stephen Eikenberryさん)。